間借り飲食店は、近年飲食業界で話題に取り上げられることの多い、新しいビジネスモデルです。
開業リスクを軽減しながら「自分の店を持つ」という夢を実現するための理想的な選択肢のひとつとして注目されています。
低コストでの開業、市場への迅速な参入、そして柔軟な営業スタイルを目指す方にとって、間借り飲食店は新たな起業方法となり得るでしょう。
そこで本記事では、間借り飲食店のメリット、効果的な物件探しの方法、必要な資格と許可、そして成功に導くための重要なポイントについて解説します。
間借り飲食店とは
間取り飲食店とは、既存の飲食店やその他の商業施設の閉店時間を利用して、別の事業者がそのスペースで独自の飲食サービスを提供するスタイルを指します。
資金やリソースが限られた小規模な起業家やシェフにとって、間取り飲食店は新しいコンセプトを試したり、ブランドを立ち上げたりするための効果的な方法として注目されている開業方法です。
そのほか、近年人気の業態としてはクラウドキッチンやバーチャルレストランなど、似たようなイメージの業態があるものの、それぞれ特徴が異なります。
クラウドキッチンやシェアキッチンとの違い
クラウドキッチンやシェアキッチンは、主にデリバリーおよびテイクアウトサービスに特化したビジネスモデルを指します。
これらのビジネスは、複数の事業者が共有するスペース内で運営され、顧客との直接的な対面サービスを提供しないのが一般的です。
バーチャルレストランやゴーストレストランとの違い
バーチャルレストランやゴーストレストランは、物理的な店舗を持たず、オンライン上でのみ存在し、主にデリバリーサービスを通じて料理を提供する営業スタイルです。
顧客との直接的なやり取りがなく、デジタルプラットフォームを通じて注文がおこなわれます。
したがって、クラウドキッチンやシェアキッチンと同様に、店舗での直接的な対面サービスを提供しません。
一方、間借り飲食店では、実際の店舗のダイニングスペースを活用するため、店内での食事提供が可能です。
つまり、間借り飲食店は、実店舗での顧客体験を重視するビジネスモデルと言えます。
間借り飲食店のメリット・デメリット
間借り飲食店を検討するに当たり、メリットやデメリットを把握することは重要です。
この章では、人気の理由であるメリットに加え、押さえておくべきデメリットについて解説します。
間借り飲食店のメリット
間借り飲食店の主なメリットは下記の5点です。
- 低資金で開業できる
- リスクを軽減できる
- 営業時間や場所の選択肢が広い
- すぐに営業できる
- 市場テストとして最適
それぞれ具体的に解説していきます。
低資金で開業できる
間借り飲食店では、既存のレストランの設備とスペースを利用するため、大規模な設備投資が不要です。
飲食店開業で最も費用のかかる設備投資が不要であれば、開業時の費用を圧倒的に抑えることが可能となり、資金面での制約がある起業家にとって大きな利点となります。
リスクを軽減できる
既存の店舗を利用する間借り飲食店のモデルでは、失敗した場合でも負担が非常に少ない点が特徴として挙げられます。
契約期間が短いため、長期的な賃貸契約に伴うリスクや固定費の負担が軽減され、ビジネスの試行錯誤がしやすくなるでしょう。
営業時間や場所の選択肢が広い
間借り飲食店では、営業時間や場所を柔軟に選択できます。
これにより、異なるターゲット市場やロケーションでのテスト営業をおこなうことが可能となるため、新しいビジネスへ取り組む際に役立ちます。
すぐに営業できる
既に設備が整っている場所を利用することで、店舗設計や設備導入にかかる時間とコストを節約できます。
これにより、アイデアを迅速に市場に投入し、ビジネスチャンスを捕えることが可能です。
市場テストとして最適
間借り飲食店の運営形態は、短期間での営業が可能であるため、新しいメニューやコンセプトを試すのに最適です。
市場の反応を確認し、必要に応じて調整することなどができ、場合によっては早期の撤退も可能です。
間借り飲食店のデメリット
間借り飲食店にはメリットが多いものの、特有のデメリットも存在するため、把握しておきましょう。
主なデメリットは下記の3点です。
- 内装や設備の自由度が低い
- 営業時間に制限がある
- 固有の住所を持てない
内装や設備の自由度が低い
間借り飲食店では、既存の店舗の内装や設備をそのまま利用するため、これらを自由に変更することは困難です。
間借りする物件によっては、独自のブランドイメージを作り出す上で制限となり得るでしょう。
営業時間に制限がある
間借りする店舗の営業時間に依存するため、営業時間に制限が生じることもあります。
これは、特定の時間帯のみでの営業や、ピークタイムでの営業が難しいことを意味します。
固有の住所を持てない
間借り飲食店は、他の店舗の住所を共有するため、固有の住所を持つことができません。
固有の住所がないという事実は、店舗の独立性や認知度、信頼性の向上において障壁となる可能性があります。
間借り飲食店を開業するまでの流れ
間借り飲食店の開業には、戦略的な計画と段階的なアプローチが不可欠です。
成功への道は、明確なコンセプトの確立から始まり、適切な物件の選定、必要な資格や許可の取得、そして効果的な集客施策の実施まで、いくつかの重要なステップを含みます。
間借り飲食店を開業するまでの流れ
- お店のコンセプトを決める
- 物件を探す
- 資格の取得や許可申請を行う
- 集客施策に取り組む
以下、ステップごとに解説していきます。
お店のコンセプトを決める
間借り飲食店を開業する最初のステップは、独自コンセプトの決定です。
この段階で、ターゲット顧客、提供する料理の種類、独特のサービススタイルなど、お店の基本的な方向性を考えます。
コンセプトは、お店のアイデンティティを形作り、顧客を引きつける要素となる重要な要素です。
市場調査や競合分析をおこないながら、差別化できる要素を明確にしていきましょう。
物件を探す
コンセプトが決まったら、次は物件探しです。
間借り飲食店の場合、立地条件、空間の広さ、キッチン設備、家賃など、多くの要因を考慮する必要があります。
目的に適した物件を見つけるためには、不動産エージェントやオンラインのマッチングサービスを活用すると良いでしょう。
物件契約の際は、契約条件や利用可能な時間帯など、細かい部分にも注意を払うことが重要です。
資格の取得や許可申請をおこなう
飲食店を運営するには、法的な要件を満たす必要があります。
法的な要件には、通常の飲食店と同様、食品衛生責任者の資格取得や保健所への営業許可申請が含まれます。
各地域によって異なる法律や規制に適合していることを確認し、必要なすべての書類を揃え、申請をおこないましょう。
これらの手続きは時間がかかる場合もあるため、早めに取り組むことが望ましいです。
集客施策に取り組む
最後に、効果的な集客施策を計画し実施します。
Web広告やSNSマーケティング、ローカルイベントへの参加、特別プロモーションの実施など、お店のスタイルに合った手法を検討しましょう。
集客においての重要ポイントは、顧客にお店の存在を知ってもらい、興味を持ってもらうために、ターゲット市場に合ったマーケティング戦略を立てることです。
また、口コミやレビューを促進することも、新規顧客の獲得に役立ちます。
これらのステップを丁寧に進めることで、間借り飲食店の開業と運営を成功へ導けるでしょう。
間借り物件の探し方
間借り物件でも、大きな障害となる可能性が高いのが物件探しです。
この章では、効果的に物件が探せる方法を2つ紹介します。
直接交渉する
物件所有者や既存の飲食店のオーナーに連絡を取り、間借りの可能性について直接交渉します。
この方法の良いところは、契約条件や利用時間、料金などを直接話し合うことで、両者のニーズに合った柔軟な合意に至ることができる点です。
直接交渉はややハードルの高い印象ですが、地域のネットワークを持っている場合や、特定の地域や特定のタイプの物件を希望する場合に効果的です。
また、間に仲介人を介さないため仲介手数料がかからず、コストを抑えることが可能です。
間借り物件専門のマッチングサービス等を利用する
一方、間借り物件専門のマッチングサービス等を利用する方法は、インターネット上で多数の物件から選択できる利便性があります。
これらのサービスは、地域、サイズ、利用可能な時間帯など、さまざまな条件で検索をおこない、ニーズに合った物件を迅速に見つけることができます。
広範囲の選択肢から物件を探したい場合や、時間やリソースの制約がある場合に有効な手段と言えるでしょう。
また、契約の手続きがオンラインで簡単におこなえるため、効率的に物件探しを進められます。
間借りして飲食店を営業するための資格と許可
間借りして飲食店を営業するには、法律で定められたいくつかの資格と許可が必要です。
これらは、飲食業を安全かつ責任を持って運営するために重要な要素であり、事業者が遵守すべき基本的な要件となります。
主に必要とされる資格には、食品衛生責任者と防火管理者があり、さらに事業の性質によってはその他の資格や許可が必要になる場合もあります。
食品衛生責任者
飲食店を運営する場合、間借りであっても食品衛生責任者の資格は必須です。
この資格は、食品の安全管理と衛生管理を担う重要な役割を果たし、食品衛生法に基づいて設定されています。
食品衛生責任者は、食品の取り扱いや保管、調理プロセスにおける衛生面の監督責任を持ち、食中毒などのリスクを防ぐための重要な役割を担います。
食品衛生責任者の資格は一定の研修を受け、試験に合格すると取得可能で、難易度はかなり低めです。
防火管理者
飲食店は、火を使用することが多いため、防火管理者の資格が非常に重要です。
この資格は、火災のリスクを最小限に抑えるために必要な知識と技能を持つことを証明します。
防火管理者は、消防法に基づいて設定されており、店舗内の火災予防対策や緊急時の対応計画の策定などを担当します。
ただし、店舗の規模によっては不要の場合もあるため、事前に確認しましょう。
防火管理者の資格は、消防署主催等の研修を受講し、試験に合格することで取得できます。
その他の必要になる資格・許可
飲食店の種類や営業形態によっては、上記の基本的な資格・許可に加えて、さらに特定の資格や許可が必要になることも。
たとえば、アルコールを提供する場合は酒類販売業の許可が必要ですし、特定の料理を提供する場合はそれに関連する資格が求められることもあります。
法的な問題を避け、安全かつ信頼できる飲食店運営をするためには、事業内容に応じて必要な資格や許可を確認し、適切に取得することが重要です。
間借りで飲食店を営業する際の注意点
間借りでの飲食店営業には、いくつかの重要な注意点があります。
それらは自身のビジネスのみならず、間借り先の店舗にも影響を及ぼす可能性があるため、特に慎重な対応が求められます。
そのなかでも、食中毒などの健康関連のトラブルと、設備や備品の破損に関する取り決めは、特に注意が必要なポイントです。
食中毒等のトラブルは間借り先にも影響する
食中毒などのトラブルは、自分が経営する飲食店だけでなく、間借り先の店舗にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。
食品の取り扱いや保管に関する衛生管理は極めて重要で、不適切な管理は食中毒のリスクを高めます。
食中毒が発生すると、顧客の健康を損なうだけでなく、店舗の評判や信頼性にも悪影響を与え、最悪の場合は法的責任を問われることもあり得るでしょう。
そのため、厳格な食品衛生管理や、定期的なスタッフ研修など、事故を未然に防ぐための対策を継続する必要があります。
設備や備品の破損についての取り決め
間借りする店舗の設備や備品の破損に関しては、十分な注意が必要です。
破損が発生した場合、その責任と修理費用の負担に関する明確な取り決めがなければ、間借り先のオーナーとの間でトラブルが生じる恐れがあります。
このような状況を避けるためには、間借り契約時に設備や備品の状態を確認し、その使用方法や破損時の責任分担について詳細な取り決めをおこなうことが重要です。
これらの注意点に適切に対処することで、間借りでの飲食店営業を安全かつ円滑におこなうことが可能となります。
間借り物件を探せるマッチング・レンタルサービス5選
間借り飲食店にとって、物件探しは非常に重要な意味を持ちます。
どのような店で出店するかによって、売上に大きく影響する可能性があるためです。
この章では、さまざまなニーズに応えることができる、間借り物件を探せるマッチングサービスを紹介します。
業態やターゲット顧客など、出店するお店に合わせて最適なサービスを検討しましょう。
magari(まがり)
画像引用:magari
magariは、飲食店特化型のシェアレストランサービスです。
このプラットフォームは、店舗の空き時間を最大限に活用したいオーナーと、手頃な価格で店舗スペースを借りたい起業家を結びつけます。
ユーザーは、地域、スペースのサイズ、利用可能時間など、具体的な条件で検索をおこない、自分のビジネスに最適なスペースを探すことが可能です。
また、不慮の事故に対応する賠償責任保険や損壊補償特約などが用意されているため安心して利用できます。
最短で1カ月から利用できるため、新しいコンセプトのカフェや、期間限定のポップアップレストランに最適です。
店タク
画像引用: 店タク
店タクは、さまざまなタイプの店舗がリストされている間借りマッチングサイトです。
飲食店だけでなく、小売りやその他の業態のスペースも扱っているなど、店舗タイプの多様性がこのサービスの大きな特徴です。
これにより、多岐にわたるビジネスニーズに対応可能であり、ユーザーは自分のビジネスコンセプトに合致する物件を容易に見つけられます。
したがって、多様な飲食コンセプトや、特定の地域での期間限定イベントに適しています。
SPACEMARKET
画像引用:SPACEMARKET
SPACEMARKETは、イベントスペースから飲食店まで、多様なスペースを提供するマッチングサービスです。
とくにイベントや特別な企画にフォーカスしており、幅広いニーズに対応しています。
お得なクーポンを頻繁に発行しているため、条件が合えばコストを抑えて出店することが可能です。
限定イベントや特別なプロモーション、ポップアップショップに適したサービスと言えます。
Kitchen BASE
画像引用:Kitchen BASE
Kitchen BASEは、国内最大規模のクラウドキッチンで、プロ仕様のキッチンスペースのレンタルサービスを提供しています。
とくに料理のテストや新メニュー開発に焦点を当てているサービスです。
これまで紹介したサービスと違い、Kitchen BASEはキッチンのみの貸し出しになるため、お客様への対面サービスは不可となります。
設備の整ったプロのキッチンが利用できることから、オンライン料理教室の開催や新メニュー開発、ケータリング事業などに適しています。
BeChef
画像引用:BeChef
BeChefは、料理教室やポップアップレストランのためのキッチンスペースを提供するサービスです。
開業のリスクを軽減したい人や、料理のスキルを活かして短期間での飲食事業を展開したい人に向いています。
こちらのサービスも、キッチンのみを借りるシステムのため、お客様への対面サービスはおこなえません。
料理教室の開催、特定の料理コンセプトの実験、短期間のレストラン運営に最適です。
まとめ|飲食店を間借りすれば開業リスクを軽減できる
今回は間借り飲食店について解説しました。改めて内容をまとめていきます。
間借り飲食店とは
既存の飲食店やその他の商業施設の閉店時間を利用して、別の事業者がそのスペースで独自の飲食サービスを提供するスタイルを指します。
間借り飲食店のメリット・デメリット
メリット
- 低資金で開業できる
- リスクを軽減できる
- 営業時間や場所の選択肢が広い
- すぐに営業できる
- 市場テストとして最適
デメリット
- 内装や設備の自由度が低い
- 営業時間に制限がある
- 固有の住所を持てない
間借り飲食店を開業するまでの流れ
- お店のコンセプトを決める
- 物件を探す
- 資格の取得や許可申請をおこなう
- 集客施策に取り組む
間借り物件の探し方
- 直接交渉する
- 間借り物件専門のマッチングサービス等を利用する
間借りして飲食店を営業するための資格と許可
- 食品衛生責任者
- 防火管理者
- その他、条件に応じて取得する必要がある
間借りで飲食店を営業する際の注意点
- 食中毒等のトラブルは間借り先にも影響する
- 設備や備品の破損についての取り決め
間借り物件を探せるマッチング・レンタルサービス
- magari(まがり)
- 店タク
- SPACEMARKET
- Kitchen BASE
- BeChef
飲食店を間借りすることは、資金やリソースが限られた起業家にとって、開業リスクを軽減する有効な手段です。
また、このビジネスモデルは低コストでの開業を可能にし、柔軟な営業スタイルと迅速な市場への参入を実現します。
しかし、食中毒のリスク管理や設備の破損に関する取り決めなど、注意すべきポイントも存在します。
これらを適切に管理することで、間借り飲食店として成功を収めることができるでしょう。