新型コロナウイルス感染拡大の影響により、外食産業は大きな打撃を受けています。
今後生き残るためには、目先だけでなく中長期的に考え、根本を見直すほどの改革に取り組まなければならない状況にあります。
例えば、抜本的な改革となる取り組みとして耳にする機会が多くなった「DX(デジタルトランスフォーメーション)」。
「DX(デジタルトランスフォーメーション)」とは、事業構造そのものをデジタルに置き換えること。概念的には、「経営をアナログベースからデジタルベースに転換する」ということです。
今までの飲食店は、50年という外食産業の歴史の中で培ってきたアナログの店舗が前提としてあり、そこにデジタルを乗せていくことで少しずつ経営を効率化していくという取り組みが主でした。
ですがこれからは、デジタルを土台にしてお店作りをおこなうことが必然となってきているのです。
今回は前編と後編に分け、具体的に飲食店はどう変化していくのか?そしてその変化に対し何を取り組むべきか?について考えていきます。
アンケート概要
- 有効回答数
- 約10,000店舗
- 調査期間
- 2020年1月6日~2021年3月14日
- 調査対象
- 予約/顧客台帳「トレタ」導入の約10,000店舗の来店データ
- 調査手法
- 来店客数全体の同週比較推移。2020年は2019年との前年同週比・2021年は2019年との前々年同週比
トレタ予約台帳
トレタのデータで見る現状整理
まず、現状飲食店はどういった状況下にあるのか、トレタをご利用いただいているお客様の予約データを参考に昨年と比較しながら見ていきます。
※データ情報
対象店舗:予約/顧客台帳「トレタ」導入の約10,000店舗の来店データ
集計方法:来店客数全体の同週比較推移
2020年は2019年との前年同週比・2021年は2019年との前々年同週比
集計期間:2020年1月6日~2021年3月14日
本データは、トレタをご利用いただいている店舗様の予約データを横断的に全国集計し、2020年1月〜2021年3月半ばまでの来店客数をグラフ化したものです。
2020年の1月の終わりから徐々に減少し、一度目の緊急事態宣言が発令されている頃は約9割減まで落ち込んでいます。その後、Go To Eatキャンペーンの開始に伴い9割ほどの予約状況に戻ったものの、第3波の訪れ、そして二度目の緊急事態宣言発出を経て、結果約5割ほどに半減していることがわかります。
現在は、少しずつ増減はあるものの、緊急事態宣言の影響などもあり、いまだお客様の来店状況に大きな変化は見えず、今後も引き続き5~7割ほどの来店客数を見込んだうえでの店舗運営を検討する必要性が考えられます。
また、このコロナ禍において大きく変化した点を、切り口を分け直近のデータを参考に見ていきます。
<予約タイミング別>
これは、お店の予約をする際に何日前に予約をおこなうか、をグラフ化したものです。
緊急事態宣言の発令前後からは、先行きが見えない状況であるため事前の予約は低調気味です。一方で、ふらっとお店に立ち寄るウォークインよりも、混雑を避け並ばずスムーズにお店に入ることを求め、直前の予約(当日予約)が増えていることがわかります。
<回数別>
お客様がお店に来店する際、お店の来店が何度目となるのかを表しています。
従来売上を支えているのは来店回数3回以上の常連様でしたが、Go To Eatキャンペーン期間中のみ、明らかに傾向が変わっていることが読み取れます。これは、Go To Eat期間中のみグルメサイト経由で流入した新規のお客様が多くなっているであろうことが原因と推測されます。ここから、キャンペーンの効果はあったもののあくまで一過性のもので、現状はまた新規のお客様の来店は減り、厳しい状況が続いていることがわかります。
<客単価別>
Go To Eat期間中のみ、水色の3,000円未満が大幅に伸びています。これは、キャンペーンの特色上、還元率の高い低客単価の飲食店によりお得感が出やすいことから需要が大きく増加したと推測されます。
一方、コロナ禍全体を通しては高級店が強い傾向であることも大きなポイントです。コロナ禍において、低単価とされる業態はいわゆる不要不急の需要が多くを占めることもあり、逆に高級店はお祝いごとや記念日などの需要が底堅く、お店の打撃が少ない傾向もあるようです。
<主要区別>
もともとコロナ禍前は100%を割っていた、世田谷区や目黒区といったいわば住宅街に位置するエリアは、コロナ禍では逆転し比較的好調な推移をたどっています。一方で、前年まで好調だった中央区や千代田区、港区などは、コロナ禍では低調気味な結果が読み取れます。
リモートワークの推進や繁華街での食事を避ける傾向から、住宅地にお店を構える飲食店が安定した需要につながっているのでしょう。
これから飲食店に必要とされる変化とは
データや現在の状況からも、従来の当たり前は逆転していること、そして恐らく売上や客数が7割程度を推移するような状況は今後も続いていくことが考えられるでしょう。
こうした中で、飲食店は今までの「繁盛」とされる常識から一転、当たり前の「逆転」が起きています。
簡潔に言うと、今まで飲食店が繁盛・成功するための打ち手とされていたことが、現在の状況下においてはむしろ悪手となってしまう現象が起きているのです。
いくつかピックアップし詳細に見ていきます。
<人材>
コロナ禍以前はどの飲食店経営者も「どうやったら採用を強化できるのか」ということを考えてきました。しかし今は、「どうやって少ない人数でお店を回すのか」ということを考えているのではないでしょうか。多くの人を抱えることがリスクに繋がるとされているのです。
<立地>
従来であれば繁華街の一等地に出店することが繁盛の大きなポイントとなっていましたが、今では繁華街にお店を持っていることはリスクの一つになっています。繁華街はそもそも家賃が高く、加えて3密を避け人が居ない状況となっている一方、住宅地は比較的家賃が手頃で、リモートワークの推進などもあり多くの人が集まっていると言えそうです。
<経営努力>
これまで「いかに価格を下げるか」に注力をしてきた飲食店も今は「いかに値上げをするか」をより重視するように変わってきています。
時短営業や席数の減少に伴い、客数を入れて回転数を増やすだけでは利益をあげることが難しいため、飲食店は「いかに受け入れられる値上げをするか」が重要なチャレンジとなってくるでしょう。
<経営方針>
従来、多くの投資をおこない「売り上げを伸ばす・店舗数を増やす」ことが主な指針となっていましたが、コロナ禍においては「いかにお店を潰さずに持続できるか」が重要になってきています。
このように、これだけ環境が変化している中で飲食店が生き残っていくためには、そのあり方も一度ゼロから再定義し、根本から変わっていかざるを得ない状況となっていることが理解できるでしょう。
外食の中でも二極化するマーケット
大きな環境変化が起きている中、根本的な変化を求められているのは必ずしもすべての飲食店ではありません。
この図は、縦軸を価格帯、横軸は繁盛度を表しています。
具体的に大きく変わっていかなければならない飲食店は、図の中央ゾーンにあたるお店と考えられるでしょう。
コロナ禍である程度淘汰されているお店もある中で、いわゆる右側の緑・オレンジ・黄色の「コの字型」に位置する飲食店は、これまでのデータでも分かる通り、そこまで影響を受けておらず、大きな変化をする必要性も緊急度は低いでしょう。
現に、ファストフードはほぼ中食にあたり、テイクアウトのスタイルができあがっていることでこのコロナ禍でも大きな影響は起きず、手軽な飲食として引き続き需要は変わりませんでした。
また、高級店も需要は変わらずあり続け、人気店においてもこの状況だからこそ、と予約が取れやすくなるため大幅なマイナスは起きていないことが想定されます。
そのため、繁盛度・価格も中間ほどの青い位置に当たるお店がこのコロナ禍において一番厳しい状況であり、そして今の大きな変化に伴って「変わるべきマーケット」になると考えられます。
変化に対してどう変わるべきなのか?
このように、環境の変化、そして変化に対応すべきお店の対象も見えてきました。では、大きな環境変化に対し、飲食店はどう具体的に変わるべきなのでしょうか。
記事の後編では、具体的に飲食店がすべき変化と行動について考えていきます。
▼後編はこちら
これからの飲食店はどう変化していくのか?<後編>
▼トレタのサービスに関するお問い合わせやご質問はこちら
https://toreta.in/contact/