飲食店や美容院、ホテルなどでは顧客が予約を無断キャンセルする、いわゆるノーショー(No Show)が売上に大きな損害を与えるとして問題視されています。

2018年に発表された「No Show 飲食店における無断キャンセルの対策ガイドライン」では「No Showによる飲食業界全体に与えている損害は、年間2000億円」と言われており、報道などでもノーショーに関して話題になることもあります。(参考:“ラーメン界の異端児”の店で無断キャンセル多発 10人予約を14回も…嫌がらせ?店主怒り「しょうもないことはやめなさい」FNNプライムオンライン)

果たして、ノーショーを防ぐことはできないのでしょうか?今回は、ノーショーが起きる原因や具体的な対策、発生してしまったときにどうすべきかなどを解説します。ノーショーの損害をカバーしてくれるサービスも紹介しますので、どうぞ最後までご覧ください。

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なぜノーショーが発生するのか?5つの理由を解説

ノーショーが発生すると、確保しておいた予約枠の分だけ機会損失が生まれたり、見込んでいた売上がゼロになるだけでなく、準備していた料理や商品が無駄になるという損害を被ります。事業者にとってノーショーはマイナスでしかなく、発生してほしくない事象のひとつです。

そもそも、なぜノーショーが発生するのでしょうか?主な原因として以下の5つが考えられます。

  1. 予約を忘れてしまった
  2. 「連絡しなくてもいい」と思われている
  3. キャンセル料を支払いたくない
  4. キャンセルしても罰則がない
  5. ホテルや店舗と連絡が取れなかった

それぞれ解説します。

予約を忘れてしまった

顧客の予約した日が2〜3ヶ月以上先であったり、仮予約として複数店舗の予約をしている場合など、顧客が予約したこと自体を忘れてしまうことがあります。

この場合、顧客に悪意はありませんが店舗にとってはノーショーと同じことなので、予約客の席や枠の確保による機会損失や、売上減に繋がります。

「連絡しなくてもいい」と思われている

近年、ホテルや飲食店などの予約は、スマートフォンでウェブやアプリなどから簡単に取れるようになりました。

しかしその分、顧客の予約に対する意識も低くなってきていることも否めません。トレタが飲食店でノーショーしたことがある人に理由を聞いたアンケートでは、以下のような回答がありました。

(引用:「できていますか?予約キャンセル対策 アンケート調査結果も紹介」トレタHP)

中でも注目したいのは下記の回答です。

3位「忙しくて連絡する余裕がなかったから」

4位「連絡する必要がないと思ったから」

7位「特に理由はなかった」

8位「電話代がもったいないから」

これらの回答から予約が軽く見られてしまっていることがわかります。

予約は顧客と店舗の間で結ばれる約束であるということ、その重さを認識してもらうことが大切と言えるでしょう。

キャンセルしても罰則がない

キャンセルポリシーを規定していない場合、顧客がキャンセルをしても罰則がないため、ノーショーが起きやすくなります。

キャンセルポリシーとは、顧客がキャンセルした場合に発生するキャンセル料金など一定の条件を定めたものです。内容は、ホテルであれば宿泊費、飲食店であれば席料やコース料金などに対して、料金の何割かをキャンセル料として求めるのが一般的です。

顧客は、キャンセル料金の発生によってキャンセルへの抵抗感が生まれ、結果的にノーショーの抑止に繋がります。

キャンセル料を支払いたくない

逆にキャンセルポリシーによってノーショーに繋がってしまうこともあります。

例えば、顧客が諸事情でキャンセルしなければならないとき、店舗に連絡をすればキャンセル料を支払わなければなりません。この際、連絡をしない方が罰則も何も受けることなく過ごせるため、ノーショーになってしまうケースもあるのです。

特に、厳しすぎる条件を設定してしまうと余計にノーショーを助長してしまいます。キャンセルポリシーが逆にノーショーに繋がる可能性もあるということを認識しながら規定するようにしましょう。

ホテルや店舗と連絡が取れなかった

顧客がキャンセルの連絡をしたものの、店舗と繋がらないときは結果的にノーショーになります。店舗側はノーショーによる損害を被るだけでなく、顧客に対するイメージもマイナスとなりますので絶対に避けるようにしましょう。

ノーショー対策を考える前に知っておきたい豆知識

ノーショーの原因がわかったところで具体的な対策へと取り組みたいところですが、その前に最低限知っておいていただきたいことがあります。

それは以下の2点です。

  • ノーショーとドタキャンの違い
  • ノーショーの違法性

それぞれ解説します。既にご存知の方は次章の「ノーショーを防ぐ事前対策7選」からご覧ください。

ノーショーとドタキャンの違い

ノーショーと似た用語で、ドタキャンという言葉があります。この二つの言葉は混同して使われがちですが、実は明確な違いがあります。

ノーショーは、店舗側に連絡をせずに予約のキャンセルをすることを意味しますが、ドタキャンは利用直前で連絡をしてキャンセルすることを言います。

この違いを把握しておくことは大切です。なぜなら、ドタキャンは顧客にとっては身内の不幸や体調不良などやむを得ない理由があり、行きたくても行けないという状況の可能性が高いからです。

その中でノーショーと同じように厳しい対応をしてしまうと「今度行こうと思ってたけどやめよう…」と機会損失に繋がりますし、評価の低下にも繋がります。ドタキャンは店舗側からすればノーショーと同じく直前のキャンセルとなりますが、それぞれの意味を理解した上で対応するようにしましょう。

ノーショーの違法性

ノーショーが発生した場合、法的に罰則はあるのでしょうか。実はノーショーで被害を受けた場合、民事上において損害賠償を請求することができます。

飲食店やホテルなどの予約は、顧客との間で結ばれる一種の契約として見なされます。その契約の通りに行われなければ、顧客側の債務不履行もしくは不法行為にあたり、賠償の請求が可能になります。

さらに意図的で悪質なノーショーの場合は、刑事上において偽計業務妨害として3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が下されます。

実際には損害賠償を請求する場合、手間や労力が発生するため、訴訟を起こす人は少ないのが現状です。まずはノーショーが起きないよう事前の対策をしていくことが現実的な対応方法といえるでしょう。

ノーショーを防ぐ事前対策6選

ではノーショーを防ぐためにどのようなことをすればよいのか、具体的な対策方法を解説します。

主な対策として考えられるのは以下の6つの方法です。

  1. 事前に連絡をする
  2. 顧客がいつでも連絡できる環境作り
  3. 予約管理システムを活用する
  4. 予約受付の期限を設ける
  5. キャンセルポリシーを作る
  6. 決済システムを活用する

事前に連絡をする

予約をしてくれた顧客に対して、来店前に連絡をすることで予約忘れによるノーショーを防ぐことができます。特に1ヶ月以上前の予約に対しては2週間前、1週間前、3日前などコンスタントに連絡をしてみるのもおすすめです。ただ、連絡しすぎるとしつこく感じられ、逆に印象が悪くなるので注意しましょう。

顧客がいつでも連絡できる環境作り

顧客がキャンセルの連絡をしたいときに繋がらないとノーショーになってしまうため、いつでも連絡が取れる環境を整備しましょう。

個人経営や小規模の店舗では受付の窓口が電話のみというところも少なくありません。その場合は、留守番電話の設定やSNSのDM受付を解放するなど営業時以外の対応を考えておく必要があります。

予約管理システムを活用する

予約管理をノートなど手書きで管理している場合、顧客との連絡手段は主に電話が主体となります。電話は常に繋がるとは限らず、折り返しに対応するなど手間や時間がかかります。

そこで、予約管理システムを活用すれば予約対応の業務を効率化することができます。メールでの連絡ができるだけでなく、多数の顧客への一斉送信も可能です。文章も一度テンプレートを作成すれば使い回しができるため、より効率的に顧客と連絡を取り合うことができます。

顧客情報もデータとして蓄積できるようになるため、顧客のニーズに沿ったサービスや商品を提供できるようにもなります。

予約受付の期限を設ける

予約から利用までの期間が空きすぎてしまうと、顧客が予約したことを忘れてしまったり、来店動機が低くなってしまう恐れがあります。

店舗側にとっても、予約の管理が大変です。そのため、1ヶ月以上先の予約は受け付けないなど、期限を設けるのもノーショーを防ぐひとつの方法といえます。

キャンセルポリシーを作る

キャンセルポリシーをまだ策定していない状況でノーショーが多発するなら、一度作成してみましょう。

先にもお伝えした通り、基準が厳しすぎると逆にノーショーを発生させてしまいます。1週間前のキャンセルは無料、前日〜3日前は料金の50%、当日は全額など期間によってキャンセル料金を変動させることで基準も緩和できます。

キャンセルポリシーは作成するだけでなく、HPに掲載したり電話で話すなど、顧客にしっかりと伝えることも大切です。

決済システムを活用する

近年、顧客が業界専用のポータルサイトなどで予約を行った場合、クレジットカードの登録を元にキャンセル料金の請求が可能になるサービスが誕生しています。店舗側はシステム上でその顧客に対してキャンセル料金を請求することができます。

このような決済システムを活用すれば、ノーショーによる被害を抑えることができるでしょう。具体的なサービスは、後半で紹介しますのでご参考ください。

ノーショーが起きた時にやるべきこと

ノーショーはどれだけ対策をしたとしても、100%防ぐことは非常に困難です。そのため、もし発生してしまったときにどうするかも決めておくことで損害を最小限に留めることができます。

ここでは、ノーショーが発生したときにどのような対応をすればよいか、具体的な方法を紹介します。

SNSで集客する

ノーショーが発生したときにまず活用したいのが、SNSです。以前、ケーキ店で60人分の特大ケーキのキャンセルが発生し、SNSで集客したことが話題になりました。

参考:「60人前特大ケーキが「無断キャンセル」 「助けてください」…途方に暮れる店をSNSの善意が救った」J Castニュースより

SNSのフォロワーはお店のファンでもあり、困っている状況を正直に伝えれば手を差し伸べてくれる方がいるかもしれません。また、この大変な状況を拡散してくれることもあります。このようにSNSによって多くの方に知ってもらうほど集客に繋がる可能性が高まります。

余剰人員を他の仕事に充てる

ノーショーが発生してしまったら、浮いた時間や労力を他の業務に充てましょう。

飲食店であれば、新しいメニューの開発や接客オペレーションの見直し、店舗内の掃除など普段ゆっくり取り掛かることのできない業務は多々あるのではないでしょうか。

ノーショーに対して憤りや後悔などネガティブな感情に捉われるのではなく、今後のより良いお店作りのために時間を活用していきましょう。

ノーショーリストを作成して記録する

悪質なノーショーの顧客は記録しておくことで、再発の防止に繋がります。ノーショーリストは予約管理システムを導入していればメモとして入力でき、すぐに判別できますが、ノートなどで予約管理している場合は検索するのが困難です。そのため、電話帳に電話番号を登録しておくなど、すぐに検索できるように工夫が必要です。

キャンセル料回収サービスを活用する

ノーショーが発生したときに弁護士が代わりに顧客にキャンセル料金を請求して徴収してくれるサービスがあります。成功報酬型のサービスが多く、キャンセル料金を回収できた際にその金額の一定の割合で手数料を支払うという仕組みです。全額をカバーできるわけではありませんが、少しでもノーショーの被害を小さくしたい方におすすめのサービスです。

ノーショーの損害をカバーするサービス3選

最後に、ノーショーが発生してしまった場合にその損害をカバーしてくれるサービスを3つ紹介します。

  • キャンセル料金回収のデジタルツール | トレタ×Payn
  • 空電プッシュ | NTTデータ
  • Reservation Eye | TIS

キャンセル料金回収のデジタルツール | トレタ×Payn

2023年6月、トレタとPayn(ペイン)が共同でキャンセル料金回収のサービスを行うと発表しました。

Paynは、キャンセルポリシーを設けている飲食店やホテルなどが自動でキャンセル料金を回収できるデジタルツールです。事業者はPaynのフォームに予約情報やキャンセル料金を入力すれば、ノーショーをした顧客にSMSが届き支払いができるようになります。

現在は、トレタを導入している事業者に対してPaynを提供しています。トレタはPaynに必要なキャンセルポリシーの設定などのサポートも行っていますので、初めての方でも安心して導入することができます。

▼詳細はこちら

「トレタ×Payn 飲食店における無断キャンセル (ノーショー)対策に向けて協業を開始。キャンセル料金回収をサポートし、飲食店経営のリスクを軽減」

空電プッシュ | NTTデータ

空電プッシュは、携帯電話にSMSを一斉もしくは個別に送信するサービスです。SMSはメールやDMよりも開封率が高く、顧客に見てほしいメッセージを送信する場合は有効です。

民間企業や金融機関、地方公共団体など幅広い事業者に活用されており、SMSサービスとしては業界トップのシェアを誇ります。キャンセル料金を回収するための専用ツールではありませんが、予約時に顧客の携帯番号を聞くことができればSMSを通してキャンセル料金の請求ができるようになります。実際に飲食店がノーショー対策として活用している事例もあります。

▼詳細はこちら
空電プッシュ
https://www.karaden.jp/

Reservation Eye | TIS

Reservation Eye(リザベーションアイ)は、ウェブ上で予約管理を行うホテルなど宿泊施設に対して予約情報をスコアリングしたデータを共有することでノーショー対策に活かすサービスです。

顧客が予約情報を登録すると、Reservation Eyeによってノーショーのリスクがスコア化されます。ノーショーのリスクが高い場合、宿泊施設はその顧客に対してこまめに連絡を取るなどの対策を打てるようになります。

今後は予約者に対して宿泊意思があるかの確認代行や、キャンセル料通知の代行などのサービス提供も予定されています。

▼詳細はこちら
Reservation Eye
https://www.tis.jp/service_solution/reservationeye/

まとめ

今回はノーショーの原因や対策についてまとめました。最後にポイントをまとめます。

第1章 なぜノーショーが発生するのか?5つの理由を解説

  1. 予約を忘れてしまった
  2. 予約に対する意識が低い
  3. キャンセル料を支払いたくない
  4. キャンセルしても罰則がない
  5. ホテルや店舗と連絡が取れなかった

第2章 ノーショー対策を考える前に知っておきたい豆知識

  • ノーショーとドタキャンの違いは、連絡の有無
  • ノーショーは損害賠償の対象となるが実際には労力や時間がかかるため事前の対策が重要

第3章 ノーショーを防ぐ事前対策7選

  1. 事前に連絡をする
  2. 顧客がいつでも連絡できる環境作り
  3. 予約管理システムを活用する
  4. 予約受付の期限を設ける
  5. キャンセルポリシーを作る
  6. 決済システムを活用する

第4章 ノーショーが起きた時にやるべきこと

  • SNSで集客する
  • 余剰人員を他の仕事に充てる
  • ノーショーリストを作成して記録する

第5章 ノーショーの損害をカバーするサービス3選

  • キャンセル料金回収のデジタルツール(トレタ×Payn)
  • 空電プッシュ(NTTデータ)
  • Reservation Eye(TIS)

さまざまな業界で問題視されているノーショー。事前対策をしっかり行うことで、発生する可能性を抑えることは可能です。

ただ、どれだけ対策しても、発生してしまう場合はあるかもしれません。そんなときにどのような対応をするのか、また損益をどうカバーするのかまで考えておくことで、ノーショーによる深刻なダメージを抑えることができるでしょう。