おにぎりは、古くから日本で親しまれているソウルフードのひとつです。料理未経験者でも簡単に作ることができ、具の違いによってさまざまなバリエーションを生むこともできます。

近年、おにぎり専門店の人気が高まっています。「ぼん屋」「おにぎり浅草宿六」など老舗の人気も再燃し、長時間の行列ができるほどです。(参考「おにぎり専門店なぜ急増?最大6時間待ちの店(東京豊島区)も 出店の意外な事情は」NHK首都圏ナビ)

今回は、「これからおにぎり屋を開業したい!」という方に向けて、開業に必要な資格や資金、開業するまでの流れなどを解説します。

具体的な方法をお伝えする前に、まずはおにぎり屋を取り巻く現状やその魅力についてもまとめます。おにぎり屋を開業したい方はぜひご参考ください。

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なぜ今、おにぎり屋が人気なのか?昨今のブームを振り返る

おにぎり屋の人気が高まるまでの変遷を簡単に振り返ってみると、2000年頃に「おむすび権兵衛」「ほんのり屋」などおにぎり専門のチェーン店の登場がひとつの契機となったと考えられます。

それまでおにぎりといえば一般的にコンビニエンスストアで購入する商品だったり、家で作るものでした。

しかし、チェーン店が登場しておにぎりにスポットがあたったことで、そのコスパの良さと美味しさに改めて気づく消費者が増加。チェーン店は駅構内や百貨店などで出店数を増やし続け、今では海外に進出している専門店もあるほどで、日本のみならず世界的に普及し始めています。

おにぎり屋が人気な理由

日本惣菜協会がまとめている「惣菜白書2023年版」では、購入頻度の高い惣菜として「おにぎり」が男女共に2位を記録。高い人気が窺えます。

引用「2023年版 惣菜白書-ダイジェスト版-」一般社団法人日本惣菜協会

なぜここへきておにぎり屋の人気が高まっているのでしょうか?

まず考えられるのは、購入しやすくコスパが良い点です。おにぎりの価格は一般的に100円〜300円程度です。今、飲食業界全体では原材料高騰による物価高の傾向がある中で、この低価格帯は手を伸ばしやすい商材として存在感を高めているといえます。

実際に惣菜白書の統計を見てみると、惣菜に求めるものとして「おいしさ」「価格」が上位にきています。おにぎりはこの2つを満たす惣菜として根強い支持を獲得しているのです。

引用「2023年版 惣菜白書-ダイジェスト版-」一般社団法人日本惣菜協会

また、おにぎりは消費者を飽きさせないような進化を遂げています。例えば、お米の炊き方や握り方の工夫、多彩な具材によってさまざまなバリエーションが見られるようになりました。過去の形のままではなく、購入意欲をそそるような工夫が功を奏しています。

外国人にとっても、おにぎりは本場の米を用いた日本のソウルフードとして人気料理のひとつです。コロナ禍が収束して訪日外国人は増加しており、おにぎり屋が集客できる可能性は今後も高まっていくでしょう。

以上の背景も相まって、今おにぎり屋は人気を集めています。

おにぎり屋の魅力5選

前章ではおにぎり屋の人気が高まっている理由についてお伝えしましたが、開業する側にとっておにぎり屋という業種にはどのような魅力があるのでしょうか?

ここではおにぎり屋を開業する魅力について5つにまとめて解説します。

日本人なら誰でも知っている商材

おにぎりは、子供から高齢者まで誰もが知っている商材で、ターゲットとなる層も幅広くなります。アプローチできる層が広ければ母数も多くなり、さまざまな方法で集客できる可能性も高まります。

調理が簡単かつ早く提供できる

一般的な飲食店の開業は料理やホール経験の有無が求められますが、おにぎりは調理未経験者でも作ることができます。調理時間もそれほどかかりません。

もちろん、クオリティを高めるためには努力が必要ですが他の飲食店と比較すると多くの人にとって参入しやすい業種のひとつといえるでしょう。

低コストでスタートできる

おにぎりは小さな販売スペースで始められるため、賃料などの物件費や水光熱、人件費を安く抑えることができます。

また、米と海苔、具材があれば作れるため原材料費も抑えられます。使用する調理器具や什器も最低限でスタート可能です。

店頭から移動販売までどこでも売れる

おにぎり屋は小さなスペースで開業できることに加えて持ち運びもしやすく、移動販売も可能です。移動販売ができればビジネス街や繁華街など集客が見込めるスポットに出店することもできます。

メニューのバリエーションが豊富

かつてのおにぎりといえば「おかか」「たらこ」など定番の具材が限られ、イメージも固定化されていました。

しかし今はさまざまな具材が用いられるようになり、多彩なメニュー開発が可能です

また、お米へのこだわりや握り方、形や大きさなどさまざまな点でオリジナリティを表現することができ、他店との差別化にも繋がります。

おにぎり屋を開業するための6ステップ

「おにぎり屋を開業したい!」そう目標に掲げてから開業するまでには、さまざまな準備が必要です。実際にどのような流れで開業に向かうのか、以下6つのステップについて解説します。

▼おにぎり屋を開業するための6ステップ

  1. コンセプト・事業計画を考える
  2. 物件を探す
  3. メニューを考える
  4. 設備・環境を整える
  5. 人材採用・教育をする
  6. 宣伝・告知をする

▶︎▶︎▶︎開業!

まずはコンセプトを明確にすることが大切です。コンセプトは商品だけではなく、店舗のインテリアデザインからサービス、宣伝に至るまで全てに統一感を出すための軸となるものです。

コンセプトが不明瞭だと、顧客に魅力が伝わりづらくなり、集客も困難になります。そのため、コンセプトを最初に固めておきましょう。

物件探しは、立地や規模、間取りなどさまざまな要素を総合的に見ながら検討します。希望の物件がすぐに見つかることは少なく、長期間に渡って探すケースがほとんどです。そのため、物件を探しながらメニューの検討や商品開発、必要な備品のリストアップなど同時進行で準備を進めると全体の流れが滞ることなく進みます。

もしスタッフを雇用する場合は、採用活動が必要です。コロナ禍以降、飲食業界は人手不足に悩まされています。採用活動を行ってもなかなか集まらないのが現状です。

そのため、求人媒体への掲載だけではなく、SNSや知人からの紹介などさまざまな方法で募集をかけて人材を獲得していきましょう。採用後の教育もどのように行うか、予め計画しておくことでスムーズに体制を整えていけるはずです。

開店間際には、宣伝や告知を行います。SNSでのお知らせやチラシを作成するなどして開店までにできるだけ認知度を高めておきましょう。

おにぎり屋の開業方法

おにぎり屋を開業する方法は、大きく以下の4パターンが考えられます。

  • テイクアウト専門店
  • イートイン+テイクアウト
  • デリバリー専門店
  • 間借り

それぞれ解説します。

テイクアウト専門店

テイクアウトは、おにぎり屋としては最もスタンダードな業態です。おにぎりは持ち運びがしやすいため、テイクアウトに最適な商材といえます。これまでオープンしているおにぎり屋の多くもテイクアウトが主流です。

テイクアウト専門店なら店頭におにぎりを並べて、会計もその場で済ませられます。厨房を含めて大きなスペースを用意する必要がなく、物件取得費や水光熱など運営コストを抑えることができます。従業員も少人数で営業が可能です。

イートイン+テイクアウト

テイクアウトの業態に加えて、食事できる席を設けるイートインを併せた形での開業方法もあります。席を設けることで顧客はゆっくりと食事をすることができ、単価アップを見込むことができます。

一方で、広めの物件を探さなければならず、賃料や水光熱など運営コストは高くなります。また、席への案内や注文受付など業務量も増えるため、従業員も一定数必要になるでしょう。メニュー内容もおにぎりだけでなく小鉢などサブメニューを用意して単価アップが実現します。このような高いコストや業務量も含めて検討するようにしましょう。

デリバリー専門店

デリバリー専門店とは、バイクや車などで注文のあった場所に送り届ける業態です。デリバリーを始める場合、最近ではUber Eatsなどデリバリーサービスに登録するのが一般的です。露出度や認知度は高まりますが、売れた商品ごとに手数料が発生するため、価格設定には注意しなければなりません

一方で店頭の販売スペースが不要なのでシェアキッチンのような調理場や備品を保管できる環境があれば開業する手軽さもあります。

間借り

普段営業している飲食店の休業日や使用していない時間帯に、店内の一部を借りて営業することを間借り営業といいます。厨房機器や店内環境など飲食店に必要な機能が既に備わっているため、スムーズに始めることができます。

費用も月額や日額で金額設定しているところが多く、ゼロから開業するよりもコストを抑えられます。また、1日限定や週末限定と少ない日数からスタートすることで開業のハードルも下がり、低リスクで始められるので、まずは試験的におにぎり屋をやってみたいという方にはおすすめの方法です。

おにぎり屋の開業に必要な資格

おにぎり屋は誰でも開業できるわけではなく、飲食店として営業するために必要な資格や認可を得なければなりません。

具体的には、以下の2つが必要です。

  • 食品衛生責任者
  • 飲食店営業許可

それぞれ解説します。

食品衛生責任者

食品衛生責任者は、地方公共団体が開催している衛生の講習を受けることで認定される公的資格です。店舗の衛生を保つために最低1名以上配置しなければならないと食品衛生法によって規定されています。

衛生環境が悪いと食中毒発生のリスクが高まります。飲食店は食品を提供する業態であり、衛生管理は必須です。食品衛生責任者は、顧客が安心して利用できる環境を作るためにも重要な存在なのです。

講習は1日にわたって開催されます。受講を終えて試験を通過すると、修了証が交付されます。講習費は地域によって異なりますが、10,000円程度で受けることができます。

申請する際は、出店地域を管轄する食品衛生協会に問い合わせましょう。

飲食店営業許可

飲食店を営業するためには、保健所の許可が必要です。保健所は、飲食店に必要な設備・環境が整っているのかを規定された基準に則ってチェックします。確認する箇所はさまざま規定されていますが、その審査に通過すれば営業許可を取得することができます。

この営業許可の申請には手数料が発生します。地域によって料金は異なりますが、大体16,000円程度が相場です。また、保健所への申請から許可が降りるまで数週間かかるので、早めに取り掛かるようにしましょう。

開業にかかる資金の内訳と調達方法

開業を考える上で最も重要とも言える資金面。おにぎり屋も飲食店のひとつであり、さまざまな点で費用が発生します。

では、実際にどの程度の金額を用意すれば開業できるのでしょうか?

ここではおにぎり屋の開業に必要な資金と、どうやって調達すればよいのか、その方法を解説します。

おにぎり屋の開業に必要な資金

おにぎり屋の開業費用はどのような業態で開業するかにもよりますが、一般的な飲食店の開業を参考にすると、数百万円から1000万円以上がひとつの目安となります。

開業費用の内訳は以下の通りです。

  • 店舗物件取得費
  • 施工費(内装・外装)
  • 厨房・店舗設備費
  • 消耗品・備品
  • 梱包材
  • 運転資金
  • 人件費

など

この中で特に高額な費用となるのは、店舗物件取得費、施工費、厨房・店舗設備費です。ただ、おにぎり屋はテイクアウト専門店での開業が一般的であり、必要なスペースが小さくて済むのでこれらの費用も比較的抑えることができます。

消耗品や人件費など開業後に発生する費用ですが、オープンしてすぐに売上が見込めるわけではありません。そのため、これら数ヶ月分の費用も開業時には準備しておいた方が安心して営業に臨むことができます。

開業資金の調達方法

おにぎり屋の開業費は決して安くはありません。全てを自己資金で充足させるのは困難です。「こんな大金は用意できない・・・」と尻込みしてしまう人もいるかもしれません。

そこで大切なのは、資金をどのように調達すればいいのか、その方法を知っておくことです。調達方法がわかればおにぎり屋の開業も現実味を帯び、前進することができるでしょう。

一般的な資金の調達方法は、以下の通りです。

  • 専門機関から融資を受ける
  • 金融機関から借りる
  • クラウドファンディングを活用する
  • 地方公共団体の制度融資を活用する

資金調達の最も代表的な方法は、日本政策金融公庫からの融資です。日本政策金融公庫とは、国が100%出資している公的な金融機関で個人事業主から法人まで幅広く融資を受けることができます。

申請する場合は、各地域にある最寄りの窓口に問い合わせます。申請すれば誰でも融資を受けられるわけではありません。決算書や事業計画書など現在の状況や今後の展望を伝えた上で、事業として成功する可能性があると見なされたとき、融資を受けることができます。

条件によっては自己資金0円でも受けられるものもありますが、その事業の安定性が感じられなければ融資は下りません。しっかりと事業計画を練った上で相談しに行くようにしましょう。

自己資金はいくらあればよいのか?

自己資金があると融資の金額は少なくて済み、返済の負担が軽くなります。また、融資する側からは返済能力があると見なされ、融資を受けやすくなります。

逆に自己資金がゼロであれば返済の負担が重くなるだけでなく、融資する側からの信頼性は低くなり、融資を受けづらくなります。

では、実際にどの程度自己資金があればいいのでしょうか。一般的には開業資金の2〜3割程度あればよいと言われています。例えば開業資金が1,000万円かかるのであれば、200〜300万円です。

もし開業まで時間があるなら、計画的に貯めておくようにしておきましょう。

補助金・助成金も活用しよう

国や地方公共団体は事業者に対して経済的な支援として補助金や助成金の支給も行っています。補助金や助成金はさまざまな種類があり、飲食業界向けや新規開業者向けのものもあります。

数千万円単位と上限額の大きな補助金・助成金もありコスト削減に役立ちます。一方で注意しなければならないのは、補助金や助成金はあくまで発生した経費の何割かを負担してくれるものであり、事前に支給される資金ではありません。

また、給付を受けるためには過去の売上データや事業計画書など必要書類を準備し、審査を通過しなければなりません。

補助金の場合は、種類によって採択率も変動します。どのように準備すればよいかわからない場合は、管轄の団体や商工会議所などに相談してみるのもおすすめです。

補助金・助成金についてより詳しく知りたい方は「飲食店が使える給付金 2024年版|補助金や助成金との違いや事例も紹介」を併せてご覧ください。

おにぎり屋で成功するための3つのポイント

おにぎり屋は可能性を秘めた業種ですが、開業してからが勝負です。競争に打ち勝ち、成功を掴むためにはさまざまな努力をしていかなければなりません。

最後に、おにぎり屋を成功させるために大切な3つのポイントをお伝えします。

ニーズを掴み、個性を最大化する

シンプルな商材だからこそ、顧客のニーズを掴みどこで差別化するのかを見極めることが重要です。

ニーズを掴むためには出店する地域の年齢層などの属性、どのような飲食店が人気なのかなど市場調査が必要です。そこからターゲットとなる顧客層が見えてくるでしょう。ターゲットが定まれば、ニーズを満たすメニューや価格帯、業態などを考えることができます。

ニーズを掴むことと同様に大切なのが、個性を最大化することです。今、消費者は食事をする際の選択肢がたくさんあります。その中でどうすれば自分たちの店舗を選んでもらえるのか?どのような価値を提供できるのか?コンセプトを明確にして磨いていくことで店舗の魅力・個性が際立っていきます。

サブメニューで単価アップを狙う

顧客にとってコスパの良さがおにぎりの魅力ですが、店舗にとっては顧客単価が上がりづらいため、売上を伸ばすためには工夫が必要です。

単価アップを狙うためには、おにぎりと相性のよいサブメニューを用意するのもひとつの方法です。例えば、米と相性のよい漬物を用意したり、唐揚げやポテトサラダなど人気の惣菜と一緒に弁当として販売する方法などが考えられます。

サブメニューは単価アップに繋がりますが、その分必要な設備が増えたり、業務負担もかかります。総合的に見て、取り組むかどうかを判断しましょう。

デジタルツールを活用する

デジタルツールを上手に活用すれば業務の効率化を実現し、顧客満足度の向上にも繋がります。例えば、キャッシュレス決済のシステムを導入すれば会計時にかかる時間は短縮され、売上も自動集計されるので経理業務の負担を軽減できます。顧客にとっても利便性が高まり、利用できる人が増えます。

業務効率化が実現すれば新たな時間や労力が生まれ、新メニューの開発やおもてなしに注力できます。導入にあたって費用は発生しますが、補助金を活用すればコストも抑えられます。

さらに詳しく飲食店のデジタルツールの活用方法について知りたい方は「飲食店DX成功事例8選|企業がデジタル化に取り組むメリットも紹介」をご参考ください。

まとめ

今回は、おにぎり屋の開業について解説しました。最後にポイントをまとめます。

  • おにぎり屋はチェーン店の登場を皮切りに魅力が再認識され、世界にも進出
  • おにぎりはコスパがよくて気軽に購入しやすい
  • おにぎり屋の5つの魅力
    日本人なら誰でも知っている商材                             調理が簡単かつ早く提供できる                              低コストでスタートできる                                 店頭から移動販売までどこでも売れる                           メニューのバリエーションが豊富
  • おにぎり屋を開業するまでの6ステップ                          コンセプト・事業計画を考える                               物件を探す                                       メニューを考える                                    設備・環境を整える                                   人材採用・教育をする                                    宣伝・告知をする
  • おにぎり屋を開業する4つの方法                              テイクアウト専門店                                   イートイン+テイクアウト                                デリバリー専門店                                       間借り
  • 開業するためには「食品衛生責任者」「飲食店営業許可」が必要
  • 必要な開業資金は一般的な飲食店同様、数百万円〜1000万円程度を目処に用意
  • 日本政策金融国庫などの融資も視野に目標金額を調達する
  • 補助金や助成金など公的な経済的な支援も活用すればコスト削減に繋がる
  • 成功するために大切な3つのポイント                           ニーズを掴み、個性を最大化する                             サブメニューで単価アップを狙う                               デジタルツールを活用する

おにぎり屋は日本を代表する食材である米を使用し、日本だけでなく海外の人からも人気を集め始めています。

老舗の人気も再燃し競争は激化していますが、まだまだこれから成長していく可能性を秘めている業種です。テイクアウトだけでなく間借りデリバリー専門店などなどさまざまな業態も視野に入れながら、開業の実現に向かって歩んでいきましょう。