飲食店経営において口コミは集客に直結する重要な要素のひとつです。
ときには口コミの内容次第で、お店の印象を左右するケースもあります。
これほど口コミの信頼性が高い理由は、第三者からのコメントで成り立つスタイルによって、公平性が確保されていると考えられているためでしょう。
本記事では口コミの重要性や、口コミを強化するメリット、高い評価の口コミを増やす方法について解説します。
集客アイデア10選
飲食店はなぜ口コミを重要視していかないといけないのか
数年前まで、飲食店を探す方法としてグルメサイトの利用が主流でした。
ところが近年ではその流れが変わりつつあります。
株式会社TableCheckが実施した「飲食店を検索するツールの利用率」に関しての調査では、これまで利用率1位のグルメサイトをGoogle(検索・マップなどを含む)が2022年に抜き去り、初めてトップに浮上したことが発表されました。Googleの利用者が1位になった原因として、グルメサイトを信用しない層が徐々に増加していることが挙げられます。
またこれらの結果から、今後はグルメサイトに頼った集客は厳しくなっていくと推測できます。
そこで重要になってくるのが、利用者の増えているGoogle マップやSNSなどの口コミです。
グルメサイトを信用しないユーザーの多くは、実際に店を訪れた客の「生の声」を参考に店を検索するため、口コミが集客のカギとなるでしょう。
しかもこれらの傾向はさらに強まると予想されることから、集客を強化するために飲食店は評価の高い口コミを集めていく施策をおこなう必要があります。
口コミを強化することで得られる2つのメリット
評価の高い口コミを増やすことで得られる主なメリットは下記の2点です。
・MEO対策として有効
・グルメサイトからの脱却
それぞれ具体的に解説します。
MEO対策として有効
Google マップに投稿された口コミの評価や返信などのやり取りは、MEO対策として有効と言われています。
MEOとはMap Engine Optimization(マップ検索エンジン最適化)の略で、Google マップで検索結果が上位に表示されるためにおこなう施策のことです。
Google マップで上位表示されることで、多くのユーザーにお店の存在を認知してもらえるため、高い集客効果が期待できます。
MEO対策を始めるために必要なこと
Google マップの検索結果で上位表示を狙うためにまずやらなければならないのは、Google ビジネスプロフィールの登録です。
Google ビジネスプロフィールとは、飲食店がGoogle上に登録できる店舗情報です。2022年より前は、Googleマイビジネスと呼ばれていました。
最初にこの店舗情報の登録が行われていないと、まず上位表示はされません。Google ビジネスプロフィールの登録は無料で行えるため、最近では多くの飲食店が利用しています。
写真やメニューなどさまざまな情報が登録できるため、情報量は店舗によって異なりますが、上位表示を狙いたいなら情報は多く細かく登録した方がよいでしょう。
より詳しくMEO対策について知りたい方は「飲食店のMEO対策とは?メリットや集客するための3つのコツを解説」を併せてご覧ください。
グルメサイトからの脱却
グルメサイトで飲食店を検索するユーザーが減少傾向にあっても、まだまだ集客力は高いため、活用している飲食店は多いのではないでしょうか。
ところがいくら集客できても、グルメサイトを経由することで送客手数料が発生するため、お店の利益を圧迫してしまうケースもあります。
Google マップやSNSの口コミを強化できれば、グルメサイトを利用しない層の獲得を加速することができ、送客手数料のかからない集客への移行が可能です。
その結果、グルメサイト頼りの集客から脱却できるでしょう。
関連記事:飲食店の集客アイディア8つ!売上アップのコツや集客ツールを紹介
評価の高い口コミを増やための一番の方法は、顧客体験を向上させること
評価の高い口コミを増やすには、顧客体験を向上させる必要があります。
なぜなら、いくらお店が素晴らしいサービスや料理を提供しても、お客様が満足しなければ良い評価を付けてもらえないからです。
顧客体験を向上させていくための重要なポイントは下記の2点です。
これらに対して、なにをするのかをチェックリスト化してスタッフ全員と共有すると、作業の漏れが少なくなります。
- 接客の質を上げる
- 清潔感を保つ
- いただいた口コミから改善策を探す
- アンケート結果からニーズを探る
どういうことなのか、個別に解説していきます。
接客の質を上げる
料理の質が高いことは当然として、接客の質は顧客満足度に直結する重要な要素です。
基本的な接客技術を身につけ、お店独自の特色が表現できればお客様の印象に残りやすくなり良いコメントをもらいやすくなります。
接客の質を向上させるために必要なこと
飲食店が接客力をアップさせるために大切なことは、以下の3つです。
- 接客基礎をマスターする
- 環境面を整備する
- マニュアルを作成する
接客の基礎は全ての土台となるため、まずは基礎をしっかりと習得することが大切です。
接客の基礎とは、明るい声での挨拶や身だしなみ、マナーやニーズに沿った提案力など、当たり前に思えるようなことばかりです。
しかし、本当に店舗全体でそれらが備わっていると言えるでしょうか?改めて見直してみると未熟な部分が見えてくるかもしれません。それがまた成長に繋がります。
また、環境面も大切です。雰囲気が暗かったりピリピリとして笑顔の作れない空気感があると気持ちよく接客したくても難しいでしょう。
オペレーションもスムーズに全体が流れるような仕組みが構築されていなければ、営業中に混乱を招きます。
環境面が整ってこそ、接客力が活かせるようになるのです。
マニュアルを作成することも、全体の接客レベルを維持するための手段としては有効です。
教える内容が人によって異なるという事態を避けることができ、習得するスピードも早まるでしょう。
このように接客力を磨いていくために必要なことは多々考えられます。より詳しく接客について知りたい方は「飲食店の接客|オペレーションの改善で売上を作れる秘訣とは」を併せてご覧ください。
清潔感を保つ
「清潔感」はお客様に注目されやすい重要なポイントです。
店内の清掃が行き届いていないと、お客様にネガティブなイメージを与え、口コミの評価が下がることもあります。
毎日清掃を基本としてエアコンやダクトなど、掃除が難しい場所は定期的に清掃業者へ依頼し、お店の清潔感を保つよう心がけましょう。
エアコンの清掃費用は機種や馬力などで大きく変わりますが、業務用エアコン1台につき5万円ほどの業者が多い印象です。
いただいた口コミから改善策を探す
良い口コミや悪い口コミから、自店の改善につながるヒントが得られることがあります。
とくに悪い口コミのなかには、お店側が気づかなかった欠点を指摘してくれるケースもあるため、非常に参考になります。
口コミはあくまで「個人の意見」にすぎませんが、気付きを与えてくれるチャンスと捉えましょう。
柔軟な思考を持って、口コミと向き合い、自店の取り組みを改善していくことが大切です。
アンケート結果からニーズを探る
アンケートを実施すれば、高い精度のニーズを把握することが可能です。
アンケートの方法は、大きく分けて紙に書くアナログ手法と、インターネット上でおこなうデジタル手法がありますが、それぞれ特徴が異なるため、目的に応じて使い分けましょう。
たとえば、手書きのアンケート用紙をテーブルに設置し、注文時に声かけをすると高い確率で記入してもらえます。
その場で回答してもらう場合、リアルタイムで体感したことを書いてもらえるといったメリットも。
また、アナログ手法はシニア世代に受けて入れてもらいやすい傾向があります。
一方、Google フォームなどを利用したオンラインのアンケートは、利用料がかからず印刷する必要もないため、ほぼコストはゼロです。
アンケートの集計や分析も、手書きのアンケートに比べ、オンラインでおこなうアンケート等を活用したデジタル手法のほうが効率的におこなえます。
しかし、こう言ったアンケートはお店側に気を使い、差し障りのない意見しか書かないお客様も多いため、匿名に配慮したり、厳しい意見が欲しい旨をアピールすることで本音を引き出すようにしましょう。
参考までに、トレタが実施した「飲食店でされて嫌だったことベスト5」を紹介すると、下記のような結果が出ました。
1.お店の人に横柄な態度をとられた 83.1%
2.料理がなかなか出てこなかった 78.6%
3.予約したのに席が用意されていなかった 77.1%
4.お店の人が注文をなかなか取りにこなかった 75.7%
5.お店の人同士で言い合いをしていた 72.1%
このような結果の場合は、接客品質の向上やや配膳までのオペレーションの改善、適切な従業員教育が実現できれば、悪い口コミが減り、良い口コミが増えると想定できます。
「飲食店でされて嬉しかったこと」ランキングなど、トレタが実施したアンケートの詳細に関しては「飲食店であったら嬉しいサービスは?データから見た結論と顧客満足度を上げる方法」を併せてご覧ください。
その他やった方が良いこと
その他、「口コミを促す」ことや、「お店の環境改善をおこなう」といった取り組みで、ポジティブな口コミが増えやすくなります。
口コミを促す
良い口コミを増やしたい場合、口コミを書いてもらえるよう、お客様に促す方法も有効です。
「口コミをお願いするなんてダメなのでは?」と考えている方もいるかもしれませんが、とくに違反行為ではありません。
「良い口コミを書いてください」とお願いするのはNGですが、口コミ投稿の依頼だけなら情報操作をおこなっているわけではないため大丈夫です。
口コミを依頼するサービスは、信頼性が高く利用者が増えているGoogle マップがおすすめです。
依頼方法は、お客様が食事を終えた直後や、会計の計算待ちのタイミングで「口コミを投稿してもらえると嬉しいです」や、「スタッフのモチベーションが上がるのでご協力をお願いできないでしょうか?」など、声をかけると良いでしょう。
ただし「Google マップに口コミを投稿すれば1ドリンク無料」など、口コミに対して報酬や特典をつけると、ガイドライン違反になるため注意しましょう。
参考:Google ビジネス プロフィール|Google ユーザーにクチコミを投稿してもらう
お店の環境改善をおこなう
ネガディブな口コミは、お店の環境が整っていない状況下で発生するケースが多く見られます。
とくに人手不足に起因しているケースが多いことから、人手不足の解消が口コミ評価の改善につながると考えて差し支えないでしょう。
たとえば「スタッフを呼んでもなかなか来ない」「料理が出てくるまで30分も待たされた」などは、人手不足による弊害と考えられます。
ポジティブな口コミを増やすためには、スタッフが定着しやすい職場環境の整備や、少ない人数でもお店が回るような仕組みを作ることが大切です。
飲食店の人手不足問題についての詳細は「飲食店が人手不足に陥る原因とは|閉店しないために必要な6つの解決策」を併せてご覧ください。
口コミに関するよくある質問とその回答
飲食店の口コミに関する質問に多い下記の2点について回答していきます。
- 悪い口コミにはどう対処すべきですか?
- 口コミの返信はした方が良いですか?
悪い口コミにはどう対処すべきですか?
悪い口コミには「お店の過失が原因」と「お客様の思い込みや勘違い」があり、それぞれ対処方法が異なります。
お店の過失が原因の口コミの場合は、謝罪のコメントを返信した上で改善を試みる必要があります。
ただしコメントの内容が必要以上に厳しい場合や、適切な表現でない場合は、口コミの運営会社に削除してもらえるか相談してみましょう。
お客様の思い込みや勘違いの場合は、口コミに返信し、どのような理由で書いたのかをヒアリングします。
やり取りのなかでお店側に問題がないと納得してもらえたら、口コミを撤回してもらいましょう。
口コミに返信がない場合や悪質なクレーマーと判断した場合など、話し合う余地がない状況なら、運営会社に事情を説明し、口コミの削除を依頼します。
口コミの削除を拒否された場合や、口コミの内容が名誉毀損にあたる場合などは弁護士への相談を検討しましょう。
弁護士が法律の観点から口コミの撤回を求めると、認められるケースもあります。
口コミの返信はした方が良いですか?
口コミには返信した方が良いです。
とくにGoogle マップの口コミは、先ほど解説したMEOの評価基準のひとつと言われているため集客に影響します。
また、コメントを見るユーザーはコメントへの返信もチェックしている可能性が高いため、ネガティブなコメントでも返しかたによっては、挽回できるケースもあります。
さらに口コミを投稿してくれたお客様とコメントを通してコミュニケーションが取れることから、リピート率の向上が期待できるでしょう。
まとめ|顧客体験を向上させ、高評価の口コミを獲得しよう
飲食店の口コミについて解説してきました。改めて本記事の結論をまとめてみます。
飲食店が口コミを重要視すべき理由
- グルメサイトを信用しない層が増え、口コミを参考にするユーザーが増加したため
- 口コミを見て来店を決める方が多いため、集客への影響力が強いため
口コミを強化することで得られるメリット
- MEO対策として有効
- 自社集客が可能になる
- グルメサイトから脱却できる
評価の高い口コミを増やす方法
- もっとも大切なことは顧客体験を向上させること
- 顧客体験を向上させるポイントは「接客の質」と「清潔感の維持」
- 投稿された口コミから改善策を探し、良い口コミへと繋げる
悪い口コミへの対処法
- 自店が原因の場合は謝罪し、改善を試みる
- 身に覚えのないクレーム等には、口コミの撤回を求める
- 名誉毀損にあたる場合は弁護士への相談を検討する
コメントに返信したほうが良い理由
- MEO対策として有効と言われている
- ネガティブなコメントに対してフォローができる
- 口コミ投稿者のリピート率向上が期待できる
高い評価の口コミが増えれば、グルメサイトに頼らない自社集客が可能になります。
とはいえ飲食店にはさまざまな口コミが投稿されるため、完璧を目指すのは困難です。
ときには口コミはお客様の主観によるものと捉え、「仕方がない」と割り切る必要もあります。
お店にできることで大切なのは、料理やサービスなどお店全体の品質を高めることです。
口コミから集客できるよう、少しずつ取り組んでいきましょう。