蕎麦屋の開業方法には、「個人開業型」と「フランチャイズ型」の2種類から選択できるという特徴があります。それぞれメリットデメリットがあるため、準備に当てられる期間や資金から、個人に合った方法で開業するようにしましょう。
本記事では、開業方法別に開業する場合にかかる費用や、準備すべき4つのことなどについて詳しく解説しています。
後半では蕎麦屋を開業後に、失敗に陥りがちなポイントとそれらの対策についてもお伝えしているので、蕎麦屋の開業で成功したいと考える方はぜひ参考にしてください。
蕎麦屋の開業には「個人開業型」と「フランチャイズ型」がある
蕎麦屋を開業する場合には、飲食店業態が「個人開業型」と「フランチャイズ型」の2種類があるため、まずはどちらで開業するかを決めましょう。
それぞれの特徴をまとめると以下の通りです。
個人開業型 | フランチャイズ |
個人での修行が必要になる オリジナリティが出しやすい 独自の判断で経営ができる | 有名ブランドの名称が使える マーケティングや広告費用が抑えられる ビジネスモデルが完成している |
ここからは各開業方法について、それぞれの特徴と費用を解説します。
蕎麦屋を個人開業する場合
個人開業型の蕎麦屋を始める場合、蕎麦打ちや調理技術、接客スキルなどの幅広い知識と経験が必要です。
そのためには個人での修行を行い、蕎麦屋の職人としての技術や知識を磨く必要があります。
経営戦略や方針を自ら決定でき、迅速に対応できるのが個人開業の利点でもあるため、自身のこだわりを形にしたい人、既存の枠組みにとらわれずに蕎麦のメニュー構成や店舗デザインなど、独自性を打ち出したいと考える方は個人での開業がおすすめです。
個人開業型の蕎麦屋を始める際の開業資金の目安は、おおよそ1000万円ほどが必要とされると言われています。
店舗の賃貸契約や内装工事、厨房機器の導入、広告宣伝費用、初期の経費などを用意する必要があります。
蕎麦屋をフランチャイズで開業する場合
フランチャイズで開業した場合は、既存の成功したビジネスモデルやブランド名、サポート体制を活用できます。
また、広告戦略やプロモーションも本部のサポートを受けることも可能です。
そのため、安定した運営や収益を得たいと考える人や経営のサポートや製法指導を受けたい人などは、フランチャイズでの開業がおすすめです。
しかし経営の制約や、独自性の制限などのデメリットも存在します。
フランチャイズ型の蕎麦屋を始める際の開業資金の目安は、フランチャイズ本部の規模や条件により異なりますが、おおよそ300万〜500万円ほどが一般的です。
フランチャイズ料、店舗の建設・改装費用、初期の経費などが含まれます。
蕎麦屋の開業で準備しておくべき4つのこと
蕎麦屋を開業するにあたり、準備しておくことは以下の4つです。
- 蕎麦作りの技術を習得する
- 事業計画書を作成する
- 資金調達をする
- 資格の取得・届出の提出をする
ここからは上記4つについて、準備しておいた方が良い理由と具体的な方法も併せて紹介します。
蕎麦作りの技術を習得する
蕎麦屋を運営するためには、蕎麦作りの技術が欠かせません。
蕎麦には二八そばや十割そば、更科そばなど様々な種類があり、それぞれの製麺作業には独自の知識とスキルが求められます。
老舗店舗に弟子入りして蕎麦打ちや調理法についての修行を行うか、フランチャイズ本部から提供されるトレーニングやサポートを通じて、大元の技術を学ぶなどして、開業前に蕎麦の製法技術を習得することが必須です。
事業計画書を作成する
蕎麦屋を開業するにあたり、ビジネスの目標や戦略、収支予測などを含む事業計画を作成します。事業計画は、事業の方向性を定める重要なガイドとなります。
蕎麦屋の事業計画では、蕎麦屋のビジョン、目標、販売戦略、予算、収支予測などを詳細に記述します。たとえば、「蕎麦屋で提供する特製蕎麦メニューの販売数を初年度で月平均100杯目指す」といった具体的な目標を立てることが重要です。
この際に併せて資金計画も立て、事前に開業に必要な費用を正確に把握し、資金調達方法を選定するようにしましょう。
資金調達をする
開業資金は、最初から全額を自分で負担する必要はなく、一般的には自己資金を担保に融資を受けたり、借りるなどして資金を集めます。
具体的にどのように開業資金を集めていけばいいのか、方法を3つ紹介します。
自己資金を貯める
全て自己資金でまかなわなくても良いとお伝えしましたが、一定の金額は必要です。一般的には、開業資金の20〜30%は用意した方がよいと言われています。
自己資金があることで信用が高まり、金融機関や国庫から資金の融資を受けやすくなります。また、融資額も全額よりは少なくて済むため、返済の負担も軽くなります。自己資金を貯めるのは時間と労力がかかりますが、なるべく貯めるようにしておきましょう。
金融機関へ融資申請をする
金融機関からの融資は、必要な資金を調達するための一つの重要な手段です。銀行、信用組合、ベンチャーキャピタルなどから、事業規模に合った金融機関を選ぶようにしましょう。
また、融資を受けることで資金を調達できますが、返済が必要となります。
融資申請を受けるためには、正確な情報提供や計画の具体度が重要です。具体的な事業計画書を作成できるように、資金の使途や返済計画を明確にしておく必要があります。
事業計画書の作成時には、ターゲットやエリア、売上収支などを適切に想定して、投資家や銀行なども安心して融資できる内容を記載しましょう。
また、綿密な計画に基づいて作成した事業計画書は、開業後もお店の目標や方向性を指し示してくれる重要なアイテムになります。
補助金・助成金を利用する
地方自治体や商工会議所、経済産業省などから提供される補助金や助成金を活用する方法です。特定の条件を満たすことで、一定額の資金を受け取ることができます。どちらも返済の義務はありません。
飲食店が使えるその他給付金について、詳しくは関連記事「飲食店が使える給付金 2023年版|補助金や助成金との違いや事例も紹介」で解説しているのでご参考ください。
資格の取得・届出の提出をする
個人開業型かフランチャイズ型での開業かに関わらず、蕎麦屋の開業時に必ず必要となる資格は「食品衛生責任者」と「飲食店営業許可」の2つです。
食品衛生責任者
飲食店営業許可証は蕎麦屋だけでなく、カフェやレストランなど、飲食店を運営する際に必要な許可証です。この許可証は保健所に申請し、立ち会い検査を経て交付されます。
飲食店営業許可の取得には、食品衛生責任者の指定と設備・構造の要件を満たすことが必要です。申請から許可交付まで数週間を要するため、スケジュールに余裕を持たせて申請するようにしましょう。
飲食店営業許可
食品衛生責任者は、飲食物の衛生管理を担当するための資格です。食品衛生法により、飲食店が営業する際には、少なくとも1人の食品衛生責任者の配置が法的に義務付けられています。
資格取得のためには、都道府県知事が主催する講習会に参加し、修了証を取得する必要があります。東京都の場合は1日の講習で受講証を取得できますが、他の地域では異なる場合があるため、必ず事前に確認するようにしましょう。
蕎麦屋の開業で失敗しがちなポイントと儲かる3つのコツ
ここまでは準備段階で必ずやるべきことについてお伝えしてきましたが、ここからは失敗を避けるための注意点と利益を上げるためのコツを解説します。
蕎麦屋の開業で失敗しがちなポイントは以下の3つです。
- 客単価が上がらない
- 集客ができず、利益が上がらない
- コンセプト設計が甘く、店舗の独自性がない
各失敗パターンについて、ひとつずつ詳しく対策も併せて解説します。
客単価が上がらない
蕎麦屋は他業種に比べてお酒やサイドメニューの注文が少ないため、客単価が上がりにくいという課題があります。
実際にも下記画像から見てわかるように、どの世代でも90%以上の人が1回あたりの利用金額が1500円未満であると回答しています。
この課題を解決するためには、蕎麦単価を上げるか、蕎麦以外のメニューに工夫を凝らすことが必要です。
具体的には、特別感や品質の向上によって蕎麦の単価を上げたり、創意工夫で蕎麦以外の料理メニューを提供し、お客様に新しい味わいを楽しんでもらうことで、客単価の向上を図りましょう。
集客ができず、利益が上がらない
集客が難しい場合、利益が上がりにくくなります。そのため集客の工夫や新しい顧客層の開拓が必要です。
具体的にはインバウンド需要の取り込みやデリバリーサービスの提供、積極的なSNS活用などのマーケティング活動によって、柔軟なアプローチで集客を促進し、収益向上を目指しましょう。
マーケティング活動の具体的なやり方やコツなどについて、詳しくは関連記事「繁盛する飲食店マーケティング大全|検討すべき5つの手法と成功事例」で解説していますので、併せてご覧ください。
コンセプト設計が甘く、店舗の独自性がない
蕎麦屋の成功には、他店にない魅力が必要です。
例えばクオリティーの高い商品や変わり種メニュー、質の高いサービスなどで独自性を打ち出しましょう。
質の高いサービスを行うためには、顧客管理などをすることによってお客様の好みや要望を把握し、信頼関係を築くことが大切です。
老舗のお蕎麦屋さん「薮伊豆総本店」でも、デジタル予約台帳を取り入れ、活用することで新規顧客かリピーターかが的確に把握できるようになり、リピーターさんとのコミュニケーションが取りやすくなったと話します。
まとめ|蕎麦屋の開業で失敗しないためには入念な準備が必要!
今回は蕎麦屋の開業について解説しました。最後に結論となるポイントをまとめます。
蕎麦屋の開業には「個人開業型」と「フランチャイズ型」がある
・蕎麦屋を個人開業する場合:修行が必要になるが、独自性が出しやすい
・蕎麦屋をフランチャイズする場合:独自性は出しづらいが、ブランド名や製法を利用できるなど、比較的安定した経営が見込める
蕎麦屋の開業で準備しておくべき4つのこと・蕎麦作りの技術を習得する
蕎麦にも種類があるため、製麺作業への研究と理解が必要。
老舗で弟子入りして働くなどで修行するか、フランチャイズで大元の技術を学ぶ。
・事業計画書を作成する
店舗のコンセプト設計から、資金計画も考えて計画書を作成する
・資金調達をする
以下3つの方法がある。
1.自己資金を貯める
2.金融機関へ融資申請をする
3.補助金・助成金を利用する
・資格の取得・届出の提出をする
必ず必要となる資格は「食品衛生責任者」と「飲食店営業許可」の2つ
蕎麦屋の開業で失敗しがちなポイントと儲かる3つのコツ
・客単価が上がらない
他業種に比べてお酒・サイドメニューの注文が少ないため、客単価が上がりにくい。
蕎麦単価を上げるか、蕎麦以外のメニューを注文したくなる工夫が必要。
・集客ができず、利益が上がらない
集客する工夫が必要。デリバリーでの販売やインバウンド需要も検討する。
・コンセプト設計が甘く、店舗の独自性がない
他店にはない魅力を作ることが大切。おすすめは予約台帳を活用して、顧客管理でサービスを向上させること。
蕎麦屋の開業は、客単価が低く、また集客が難しいながらも、適切な準備と知識があれば成功も大きく期待できる事業です。
本記事で解説した、蕎麦屋開業の準備すべき4つのことや失敗しがちなポイントと対策、老舗蕎麦屋のDX化での成功事例は、これからそば屋を開業しようと考えて散る方には大いに役立つのではないでしょうか?
長きにわたり多くの人に愛される蕎麦屋を開業できることを願っています。