飲食店のDX事例

DXという言葉を聞いたことのある飲食店経営者であれば、多くの方が「本当に成功するのか?」と思うものです。「自分のお店にもDXというものを取り入れたいけれど、何をしたらいいのかよく分からない」という方も居るでしょう。

海外だけではなく大手企業を中心に日本国内でもDXの取り組みは進み始め、飲食業界においてもDXを検討する店舗が増えています。

飲食店では人手不足が深刻であるため、一刻も早く効率化を図りたいですよね。今回はDXの基礎知識・飲食業界の現状・活用シーンなどをまとめ、実際に成果も出ているユニークな取り組み・事例も併せて紹介します。

飲食店が取り組む実際のDX事例を知り、自分のお店にDXが必要かどうか判断できるこの記事は、時代に取り残されたくない飲食店経営者必見です。

資料を無料配布中!飲食店のDX成功事例集

・予約管理の方法を変えて売上20%アップ
・オーダーのオペレーションを組み直して客単価7%アップ、人件費30%削減
・電話対応をデジタル化して予約数3割アップ

非効率な業務にデジタル技術を導入して効率化を図り、従業員や顧客の満足度を上げていくDX。上記はそんなDXを取り入れることで、実際に結果を出している飲食店様の事例の一部です。

どんな取り組みで効果を発揮しているのか?様々な業態や価格帯、店舗数の飲食店様の事例をまとめた資料を作成しましたので、ぜひご覧ください。

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【3分で理解する】飲食店のDXとは?

DXとは何なのでしょうか?ここではその定義や歴史などを簡単に振り返り、そして飲食店にとってのDXについて詳しく解説します。

DXとは「デジタル技術を使って組織も顧客満足度も改善すること」

DXとは「デジタル・トランスフォーメーション」の略語で、AIなどのデジタル技術活用によって組織全体の業務最適化を図り、従業員・顧客満足度の向上に繋がる改革のことです。

・コンビニで無人決済を導入し、スタッフの人員削減を実現。顧客の行列も解消
・ミーティングや報告をZOOMで行うようにしてテレワークを推進
・電話受付をAIによる自動音声システムにして対応業務を効率化

DXは2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマン教授が提唱したことをきっかけに世界へと広まっていきました。

日本では2018年に経済産業省が「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」を発表し、この数年でDXの取り組みが活発化してきています。

ただし、飲食業界におけるDXの認知度は低い傾向にあります。トレタがDXの認知度について飲食店に対して行ったアンケート調査では、「あまり知らない」「全く知らない」と答えた店舗が64%と、飲食業界内でも認知度の低さが浮き彫りとなりました。


引用:「飲食店にDXは必要? 関係者500名以上にアンケート調査」トレタHPより

では、飲食店においてのDXとは何なのでしょうか?

それは非効率な業務にデジタル技術を導入して効率化を図り、従業員や顧客の満足度を上げていくアクション全体のことを意味します。

飲食店の中には、注文や予約の受付を電話や手書きのメモで行ったり、スタッフの勤怠管理をエクセルで処理したりなどさまざまな業務を地道な手作業で対応している店舗は少なくありません。

多大な労力がかかる業務や仕組みに対して、従業員および顧客が感じている悩みや問題点も多々あるはずです。

これらを前向きに捉えてみると、飲食店がDXとして取り組む余地は大きく、変革していける可能性も存分に秘めているということもできます。

具体的なDXのメリットは主に下記の7つです。

  • 人手不足を解消できる/人件費を削減できる
  • 顧客情報を取得・蓄積できる
  • 顧客満足度を向上できる
  • ヒューマンエラーを軽減できる
  • 集客力を向上できる
  • 再来店を促進できる
  • 非接触でサービスを提供できる

飲食店のDX化を推進する際の注意点やシステム、ツールについては「飲食店のDXとは|利益率向上に繋がるデジタル化推進のコツと企業事例」を併せてご覧ください。

飲食店のDX活用 | シーン別に8つの事例を紹介

では、現在DXが飲食店のどのような場面でどのように行われているのか、代表的な8つのシーンと実際のDX導入事例を合わせて紹介していきます。

注文・会計

飲食店の接客の中で、注文や会計は必ず発生する業務です。

従来は手書きの伝票に聞いた注文を書き、厨房へ行ってオーダーを伝えるというのがスタンダードな流れでした。
個人経営のレストランや小規模の店舗はまだこの方法で接客しているところも多いでしょう。また、オーダーエントリーシステム(OES)が搭載されたハンディを使って注文を取っているところも多数あります。

しかし、セルフオーダーシステムを導入する飲食店も増えていることも事実です。注文受付の効率化だけでなく、決済までスマホ上で済ませることができればキャッシュレス化も実現できるため、売上集計時のミスや現金管理のリスクを軽減できるなどさまざまな効果が見込めます。

注文や会計の負担が削減できる分、顧客へのサービス力アップや営業に専念しやすくなります。

セルフオーダーシステムの種類や導入による効果については「飲食店におけるセルフオーダー|5つの効果と導入に最適なお店とは」を併せてご覧ください。

DX事例 YONA YONA BEER WORKS | モバイルオーダー導入で少人数営業実現

概要

YONA YONA BEER WORKSは、国内クラフトビールの先駆けともいえる「ヤッホーブルーイング」の多彩なビールが楽しめる直営ビアレストランです。カジュアルにクラフトビールが楽しめる場として、ビール好きを中心に幅広い顧客層から親しまれています。

YONA YONA BEER WORKSは新型コロナの感染対策として非接触を実現するためモバイルオーダー「トレタO/X」を導入しました。その結果、顧客との非接触を実現し、さらに業務効率化によって営業に必要なスタッフ数の削減にも繋げることができました

モバイルオーダー導入前は顧客とのコミュニケーション減少を懸念していたものの、注文受付の工程を省略できた分、提供時に美味しい食べ方のコツを伝えるなどよりビールをより楽しんでもらえるようになったという好事例です。

課題

  • 新型コロナの影響による非接触の実現
  • 非接触の中でビールの楽しさを伝えていく

何を行ったか?

  • モバイルオーダー「トレタO/X」を導入
  • スタッフやトレタ担当者とのミーティング
  • メニューは写真+詳しい文章で解説
  • 顧客におすすめの食べ方など声がけを増やす
  • 注文時に表示されるイラストを毎回変えるよう設定

成果

  • 週末営業に必要な人員が12~3人から10人程度に減少
  • 接客業務の効率化で従業員の気持ちにゆとり
  • メニューの充実や顧客への声がけで満足度アップ

詳細はこちら
https://toreta.in/case/2023-03-16/507/

予約・顧客管理

飲食店の予約は電話での受付が一般的でしたが、予約受付システムが登場して以降、自社ホームページやぐるなびなどグルメサイトによるウェブ予約が可能となりました。

ウェブから予約を受け付けることで不要な電話対応をせずに済み、顧客データも収集・管理できます。顧客データの収集・管理は効率面だけではなく、店舗内で共有することで次回来店時によりパーソナルなサービスを提供することができます。予約帳への記入ミスなども防げます。

予約受付業務や顧客管理が効率的におこなえるため、人件費の削減や人手不足の解消に役立つでしょう。

予約管理システム導入のメリットや選び方については「飲食店の予約管理システム|導入時に使える補助金や具体的な進め方」を併せてご覧ください。

DX事例 SANRASA(サンラサー) | 小規模店舗でもウェブ予約で1日売上20%アップ

概要

SANRASA(サンラサー)は東新宿にあるスタンドのスパイスカレー店です。1日30食限定のカレーを求めて連日行列ができる人気店になっています。

店内はたった5席と限られた席数ですが、SNSのDM機能を使って予約対応を行っていたため、顧客とのやりとりや手帳での管理に課題を感じていました。最初はGoogle スプレッドシートを活用し始めて、管理しやすくなったことがデジタル化導入のきっかけとなったようです。

最終的な決め手となったのは、DM予約だと必要な情報が1回で収集できないことへの煩わしさ。予約は「名前、希望時間、人数、連絡先を記載してください」とお願いしても「明日予約をお願いします」としか来ないことも多々あり、やりとりの回数が増えてしまっていました。

そのストレスを解消するために「トレタ」を導入することに。ウェブ予約スタートのお知らせを自社HPやSNSでお知らせすると、新規顧客が激増。予約状況も簡単に可視化されるため、空き枠をうまく操作するようになり、回転率も向上しました

結果的に1日の平均売上は20%もアップ。トレタの費用は2〜3日営業分でまかなえるようになり、今後は他機能も導入してさらなる効率化を目指しています。

課題

  • DMでの予約やりとりに手間がかかるので効率化したい

何を行ったか?

  • 予約台帳/顧客台帳サービスの「トレタ」を導入
  • 予約をInstagramのDMメインからウェブでの受付へ

成果

  • 常連中心の顧客層に新規顧客が増えた
  • 空き状況がすぐにわかるため予約枠をコントロールして回転率が向上
  • 今まで記憶に頼っていた顧客情報が画面上で管理できる
  • 1日の売上20%アップ

詳細はこちら
https://toreta.in/case/2022-08-16/3111/

DX事例 旅するジンギスカン 生らむバッハ|グルメサイトと予約を一元化して効率化

概要

愛知県名古屋市にある「旅するジンギスカン 生らむバッハ」では、生でも食べられる新鮮なラム肉をさくっと揚げて食べるスタイルが好評の料理店です。

トレタで業務効率化ができるようになったきっかけは、もともとトレタ予約台帳を使用していたものの、グルメサイトの情報を反映させる際に確認漏れがあったりスタッフと情報共有ができていなかったりした課題があったことに起因します。

そこでトレタの「レスラク連携」を使うことによって、グルメサイトとトレタ予約台帳を連携。トレタ予約台帳に直接グルメサイトから予約がいくため手入力の手間が省け、当日ギリギリまで予約を受け付けることが可能になりました。

その結果、2割ほど予約数がアップ。店長さんだけではなく他のスタッフも予約状況を把握できるようになったのは大きな進歩です。

課題

  • 予約管理をもっと効率化したい

何を行ったか?

  • トレタ予約台帳にレスラク連携を紐づける

成果

  • 予約数2割増加
  • スタッフとの情報共有がスムーズに

詳細はこちら
https://toreta.in/case/2023-01-19/472/

集客

飲食店は他業界に比べて全国的に店舗数が多く、長年厳しい競争を強いられています。厚生労働省の統計によれば2021年度の飲食店営業施設数は約145万(参考:「飲食店営業施設数の推移」厚生労働省統計より)。コンビニが約6万店舗であるため、その数と比べると競争相手の多さが伝わるのではないでしょうか。

だからこそ、飲食店がどのように集客していくかについては非常に重要です。

かつての集客方法といえばチラシやショップカードなどの紙が主流でした。このシーンでのデジタル化といえば、InstagramやLINEなどのSNSが挙げられます。

SNSの活用は宣伝・告知だけでなく、顧客とのコミュニケーションを可能にし、店舗以外の場での繋がりを生み出しました。

また、他にも独自で店舗アプリやデジタルのスタンプカードを制作し、登録者に対してクーポンなど限定特典を提供して再来店を狙う方法もあります。

集客はターゲット層を分類し、ターゲット別に最適な方法でアプローチすることが大切です。
ターゲットにとって関連性の低い方法でアピールすると、相手に届かない可能性が高いため注意しましょう。

飲食店の集客方法や実施の方法については「飲食店の集客|すぐに実践できる8つのアイディアと売上UPのコツ」を併せてご覧ください。

DX事例 しら河浄心本店 | ひとつにまとめて業務効率とコスト削減を改善!

概要

しら河浄心本店は名古屋名物「ひつまぶし」が人気のうなぎ料理店です。名古屋市内にテイクアウト専門店と合わせて5店舗展開しており、地元客はもちろん観光客からも支持を得ています。

しら河浄心本店では、以前から紙のスタンプカードを活用し顧客の囲い込みを試みていたものの、申し込み用紙への記入という登録方法や獲得した顧客情報がうまく活用できていない点に課題を感じていました。

しかし、顧客層の開拓としてLINE公式アカウントを開設したことをきっかけに、「トレタスタンプ」を導入。ゲーム感覚で楽しめる初回限定の特典効果もあって初月で登録者数1万人登録を突破し、若年層にも活用されています

スタンプカードの登録も簡単になったことで抵抗感が減少し、顧客情報もデータとして収集できている成功事例です。

課題

  • 紙のスタンプカード登録が手書きで面倒
  • 取得できた顧客情報が活用できていない
  • 顧客層を拡大したいものの情報発信ツールがない

何を行ったか?

  • LINE公式アカウントを開設
  • スタンプカードシステム「トレタスタンプ」を導入
  • 無料でひつまぶしがランクアップする初回限定特典
  • 卓上POPを使いながら来店時にスタンプ登録を案内
  • 従来の紙スタンプカードも併用

成果

  • トレタスタンプの登録者数が初月で1万人を突破
  • スタンプ利用率5%→25%にアップ
  • 顧客が紙スタンプカードを忘れたときの対応時間削減
  • 顧客情報が収集できたことで販売戦略に活用

詳しくはこちら
https://toreta.in/case/2022-07-26/2653/

DX事例 しゃぶとかに 源氏総本店 南越谷店| 4ヶ月でLINE友だち数1,000名突破!

概要

愛知県向山と埼玉県南越谷で2店舗を展開している「しゃぶとかに源氏総本店」。日常をちょっぴり贅沢に彩るしゃぶしゃぶと会席料理が有名であり、冠婚葬祭にもよく使われています。

しゃぶとかに源氏総本店ではもともと向山店と南越谷店で連動したキャンペーンなどを行っていたそうですが、南越谷店だけの小回りのきいた施策を何か打てないだろうかと考えていたといいます。また、紙のアンケートに記入するという既存の会員獲得方法では若年層にアプローチしにくかったことも課題でした。

そこでトレタの「LINE通知連携」を導入。今まで予約確認は電話で行っていたもののLINEで行うようになり、最初はお客様の中にも従業員の中にも戸惑いはあったそうですが、小回りのきく販促が行えることによって常連客の来店頻度が高まりました

LINEの友だちが増えたあと、「新規友だち加入でファーストドリンクをサービスします(4名様まで全員に)」というクーポンを配布すると、なんと180件もの反響がありました。

課題

  • 小回りのきく販促をしたい
  • 若年層にもアプローチをしたい

何を行ったか?

  • LINE通知連携を導入
  • クーポンの配布

成果

  • 常連客の増加
  • 初めてのクーポン配布後、180件の利用

詳細はこちら
https://toreta.in/case/2022-03-23/2630/

勤怠管理

スタッフの勤務時間管理や集計は、給与に関わる重要な業務です。スタッフが増えれば増えるほど多大な労力が必要となり、ミスも発生しやすくなります。

この点もタイムカード専用アプリや勤怠管理システムを導入することで大幅な業務の効率化を図ることができます。また、シフトの管理も一元化できるため、複数店舗を運営している飲食店には特に有効です。ただ、導入コストがやや高いため、導入の目的を明確にし、今必要かどうか判断することが大切です。

DX事例 某お好み焼き店 | 簡単登録できるスタンプカードで1万人獲得!

概要

1970年前半に関西でオープンしたお好み焼き店の事例です。元々使っていた勤怠管理システムの使いづらさに不満があり、先に導入していたPOSレジシステムに備わっていた勤怠管理システムに変更。

ひとつのiPadで会計と勤怠管理を管理できるようになっていたため、業務効率が大幅に向上しました。コストの削減にも繋がり、スタッフも使いやすい操作画面で抵抗感なく導入できています。

シフトの管理も1台のiPadで可能となりました。勤務時間が可視化されたことで労働時間に対する意識がスタッフを含めて全体で変わっていったという成功事例です。

課題

  • 以前使っていた勤怠管理システムが使いづらかった
  • 各店舗スタッフとのコミュニケーションが希薄

何を行ったか?

  • 顔認証で簡単に出退勤管理できるタイムカードシステムを導入

成果

  • スタッフの勤務状況に合わせてシフトが組みやすくなった
  • 顔写真でスタッフの健康状態が確認できるようになった

膨大な作業時間を30時間にまで短縮|某居酒屋

概要

新潟で居酒屋チェーンを展開している某居酒屋企業では、トレタを導入する前は250人以上もの従業員の勤怠をエクセルとタイムカードで行っていました。

そのため集計に膨大な時間がかかっており、どうにか効率化できないものかと悩んでいたそうです。そこで勤怠管理システムを導入することで、丸1日かかっていた作業を約30時間ほどに短縮することに成功。シフト管理にかける人員と時間の削減に大きく貢献したといいます。

課題

  • 勤怠の管理がとにかく面倒

何を行ったか?

  • 勤怠管理システムを導入することでシフト管理を自動化

成果

  • 工数を約30時間に短縮
  • 有給休暇の主塔状況の可視化

これからの飲食店にDXが必要な理由と与えるインパクト

事例で説明した通り、DXは有効的な戦略のひとつです。最も大切なことは、DXに取り組んだ結果、組織に大きなインパクトを与えて変革が起こりうる、ということです。

それでは事例を挙げたところで、改めてなぜ飲食店にDXが必要なのか、またDXが与えるインパクトに触れていきます。

理由1 外食から中食への行動変容に対応するため

新型コロナの発生は、人々を外食から中食志向へと行動を変容させました。中食とは、惣菜や弁当、デリバリーを利用して家で食事をすることをいいます。

NDPジャパン株式会社によると、コロナ禍の前後で外食市場の成長率は減少傾向にあり(-23.3%)、反対に中食市場は順調に拡大成長を続けています(+13.8%)。

引用:「外食・中食 調査レポート」NDPジャパンHPより

同社は「爆発的な成長を続けてきたデリバリーは、市場再編もすすみ、今後は穏やかな成長、定着へ移行する。」とまとめています。今までデリバリーやテイクアウト事業に無縁だった店舗にとっても、より身近な営業形態になっていくでしょう。

デリバリーはスマートフォンやタブレットで注文・顧客管理するため、デジタル技術の導入は必須となります。そう聞くとDXに取り組んでいない方にとっては抵抗感が生まれるかもしれません。

ただ、デリバリーブランドを提供しているサービスの中には、デリバリー導入のサポートを行っているところもあり、未経験でも導入しやすい環境は整ってきています。

デリバリー事業への参入は、中食への行動変容をプラスに捉え、DXの取り組みを始めるきっかけとして有効な業態のひとつと言えます。

理由2 社会が求める”非接触”を実現するため

コロナ以降、マスク着用やソーシャルディスタンスが当たり前となった今、なるべく“接しないこと”が求められています。

飲食店では注文や会計時など顧客と接するシーンは多々あります。しかしこの点もデジタル技術を導入することによって非接触が実現できるようになりました。

非接触で最も代表的なのはキャッシュレス化やセルフオーダーシステムの導入が挙げられます。注文受付や会計を端末でやりとりすることで、接点をゼロに近い状態へもっていくことができます。

具体的な方法や事例は後ほどあらためてまとめますが、非接触の実現はコロナの感染対策としてだけでなく業務効率化の側面から見ても非常に効果的です。

理由3 深刻な人手不足を補うため

顧客の外食機会が減ったことによって客足が遠のいた結果人員余剰状態となり、人員削減を余儀なくされた飲食店は少なくないでしょう。

しかし、徐々にコロナに対する行動抑制ムードも緩和してきており、少しずつ客足が飲食店に戻ってきています。

引用:「外食産業市場動向調査2022年9月度 結果報告」一般社団法人日本フードサービス協会

​これは飲食店にとって喜ばしい状況ではありますが、ここで問題になるのが人手不足です。

帝国データバンクの調査によれば、「非正規社員の人員不足に困っている」と回答した業種は飲食店が70%を超えて1位を記録しています。

引用:「人手不足に対する企業の動向調査(2022 年 7 月)」帝国データバンクより

今後も求人の応募数が急激に回復するとは限りません。また最近の記録的な円安も後押しとなって海外の人が日本で働く魅力も薄れています。

当面の間は今在籍している人員のみで業務を回していかなければならない状態が続くことを見通しておかなければなりません。

今までより少ない人数で業務を行わなければならない今こそ、DXによる業務効率化が必要なのです。

飲食店がDX推進を行うべき理由まとめ

①外食から中食への行動変容に対応するためにデリバリー事業がひとつの有効な手段
②社会が求める非接触のニーズにはキャッシュレスやセルフオーダーサービスの導入が必要
③深刻な人手不足を補うためには少人数で営業するための業務効率化を実現すべき

飲食店のDXを支援するトレタの創業者でもある中村仁氏はnoteの中でDXの取り組みで人件費を13%も下げた飲食系企業の事例を取り上げながら、下記のように話しています。

「今の飲食店で人件費が20%以下にまでなったら、それはもう僕らの知る飲食店の収益構造ではありません。」

「DXの本質は「外食産業を全く異なる産業に変えてしまう」くらいのインパクトがあるのです。」

この企業さまでは「ホールスタッフが半分でもお店が回る」というメリットを享受しつつも、ここからさらに進んだ議論が始まっています。それは「下がった13%を何に使うか」です。

引用:「コロナ禍でトレタが信じた未来と、トレタを信じてくれたお客様の話。(そしてその成果)」トレタ代表 中村仁

飲食業界を取り巻く情勢は大きく変わり、飲食店も変革のときにあります。そんな今だからこそ、飲食店にとってDXが重要なのです。DXは今の厳しい局面を乗り越えるための戦略であると同時に、今までの形を変えるきっかけにもなりうるのです。

飲食店がDXで成功するためのポイント3選

DXの成功事例を見てきましたが、具体的にどうすれば成功するかのポイントも確認しておきましょう。

ここでは飲食店がDXに成功する秘訣を3点に絞って解説します。

デジタル化を目的にしない

デジタル化はDXを遂行するために必要な手段です。ただ、デジタル化をゴールとして捉えてしまう企業は少なくありません。

例えば、セルフオーダーシステムを導入して接客業務の効率化に成功したとします。その結果、スタッフが「接客しなくて済むからラク!」とだけ捉えてしまってはこのデジタル化は失敗と言えるでしょう。

接客業務を効率化したことで浮いた時間や労力をどう活用していくのかが大切です。デジタル化を目的にしないためには、DXによって何を達成したいのかを明確にしておかなければなりません。

DXは顧客満足や組織全体の改革のためのアクションであることを念頭に置いておきましょう。

利益に見合わない多額投資をしない

DXは継続的にコストがかかります。昨今のシステムは月額制のものが多いためです。

飲食店の売上は社会情勢によっても大きく変動します。特にここ数年は新型コロナや過剰な円安など飲食店にとって厳しい壁が立ちはだかっています。

急に売上が激減することも考えられます。その状況下で売上に見合わないDXを敢行したとしても逆に首を絞めるだけです。

DXは一朝一夕で成り立つものではありません。継続して成果を出していくためにも利益に見合った投資としてできる範囲でDXに取り組むようにしましょう。

DXのための仕組みを構築する

デジタル技術を導入すれば、接客や勤怠管理など各シーンのオペレーションが今までと全く変わります。そのため、社内全体にデジタル機器やシステムの使い方を教育していかなければなりません。

実践するのは店舗で働くスタッフです。「今まで通りの方がやりやすくていいのに」と思うスタッフもきっといるでしょう。運営本部が意気揚々とDXを進めようとしてもそのギャップがある限り、DX成功への道は遠のきます。

ギャップを埋めるためには、新しいオペレーションのレクチャーはもちろん、何のためにデジタル化を行っていくのかを店舗内全体にしっかり共有することが大切です。

飲食店DXの導入に活用したい補助金制度

飲食店DXを推進するには、複数のシステムやサービスを導入するケースが多く、ある程度まとまった金額の導入資金が必要です。
とはいえ、そのような余剰資金を蓄えているお店は少ないでしょう。
そこで活用したいのが、国や地方自治体からのサポートとして用意されている補助金制度です。

補助金制度を活用すれば、必要経費の2/3(最大)を補助金として受けることが可能になります。
2023年6月現在、飲食店のDX導入に活用できそうな補助金は「小規模事業者持続化補助金」「IT導入補助金」などでしょう。

補助金の詳細やその他の補助金や給付金、助成金については「飲食店経営に使える給付金・補助金・助成金をわかりやすく解説」を併せてご覧ください。

まとめ

今回は飲食店におけるDXとは何かを解説しました。

飲食店は勤務時間が長く、肉体的にも精神的にも大変な仕事です。しかし、DXを正しく理解し、目的に向かって取り組みを推進していくことで新しい店舗の形が生まれていきます。

業務の効率化によって接客のサービス力や利便性の向上などが実現できれば、顧客そして組織全体の満足度向上にもおのずと繋がっていくでしょう。

DXが今の自分たちにとって本当に必要なものなのかどうか、一度しっかりと検討してみましょう。